メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「オンライン診療」支援を阻止する自民・医師会

テクノフォビアを脱却して国民の命を守れ

塩原俊彦 高知大学准教授

 3月18日付の日本経済新聞に、「「コロナで出番」のはずが 消えたオンライン診療補助」という記事が掲載されている。

 それによると、10日に政府がまとめた緊急対応策の第2弾の柱の一つである「医療提供体制の整備」のなかに前日まで案としてあった「情報通信機器を用いた診療などのための遠隔医療設備整備事業」が公表文書から忽然と消えていたという。

 この事業が認められれば、PC、スマホなどの電子機器を使って患者と医師の情報交換によって診療や処方を可能とする、いわゆる「オンライン診療」や「オンライン処方」を行う診療所などに必要な情報通信設備の導入費を全額、国費で補助する予定だった。

 補助の上限は825万円で、新型コロナウイルス感染が疑われる患者への健康医療相談・受診勧奨をする医療機関に、遠隔医療設備の整備のための経費を補助しようと厚生労働省の役人が主導してつくり上げた案であったという。

 しかし、同記事によると、「政権や与党と親密な関係にある医療団体に、厚労省が事前にそれとなく伝えたら待ったをかけられたのが真相だ」という。

拡大Shutterstock.com

国民の命を軽視する日本医師会、自民党、そして公明党

 すでに本サイトの記事「「オンライン診療」を推進せよ」で指摘したように、日本医師会はそもそも自らの既得権を守るために「オンライン診療」に後ろ向きの態度をとってきた。ゆえに、この記事にある医療団体が日本医師会であることは容易に想像できる。

 その証拠に、2月27日に日本医師会の横倉義武会長が安倍晋三首相に手渡した「新型コロナウイルス感染症に関する要望書」の5項目の要望のなかには、オンライン診療の積極果敢な導入支援の話はまったく書かれていない。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への懸念から、診療所や病院に出向くことすら躊躇せざるをえない国民に対して、オンライン診療できるような体制づくりを迅速に進めることが国民に安心感を広げることにつながるだろう。

 にもかかわらず、日本医師会はオンライン診療の普及が医師の診療機会を減らし、収入減をもたらしかねないと懸念している。そこには、「国民の命を守るためには何でもする」といった使命感が感じられない。自分の利益だけを追い求め、国民の願いをまったく無視する「カネ亡者」の顔しかない。 

 情けないのは、日本医師会と結託する自民党の姿勢だ。自民党もまた、国民の命を守ろうなどとはまったく考えていないのではないか、とすら思えてくる。同じく、公明党もひどい。「生命・生活・生存」を最大に尊重する人間主義が泣いている。いまこそ、オンライン診療の拡充が喫緊の課題となっているにもかかわらず、公明党は国民の「生命・生活・生存」を脅かすCOVID-19対策としてオンライン診療の重要性を無視するのか。

情けない野党

 野党は何をしているのだろうか。まさに「非常事態」であるにもかかわらず、「国民の命を守るためにできることはすべてやる」という気概がまったく感じられない。

 野党議員は国会において、この記事の真相部分を徹底追及すべきだろう。なぜ「遠隔医療設備整備事業」が緊急対応策から削られたのか。その意思決定はだれによって行われたのか。その理由はなぜか。日本医師会は遠隔医療設備整備事業になぜ反対するのか。こうした問題を徹底的に問いただすなかで、安倍政権が本当は国民の命のことなど考えていない実態を明らかにしてほしい。そして、遠隔医療設備整備事業の支援策を改めて予算に盛り込む努力をすべきだろう。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

塩原俊彦の記事

もっと見る