対テロ戦争に疲弊した米国内世論がトランプを支える
第3部「カム・ホーム・アメリカ―新たな孤立主義の台頭」(1)
園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員
「バカげた終わりなき戦争を終わらせる」
「今こそバカげた終わりなき戦争を終わらせる」
大統領就任以来、トランプ氏はこう繰り返す。
2001年の9.11(米同時多発テロ)をきっかけに始まった一連の対テロ戦争を早期に終結させ、中東地域から米軍を撤退させることは、トランプ氏の2016年大統領選の公約でもある。
ただ、これは大統領選のときから訴え始めたわけではない。トランプ氏は政治にまだ本格的に関わっていない不動産会社経営の時代から、アフガニスタン戦争の早期終結を訴えてきた。
トランプ氏のツイッターの記録を調べると、オバマ政権下の2011年に戦争終結を訴え始め、少なくとも12回にわたってアフガニスタン戦争を批判し、時にはオバマ大統領に対して米軍をアフガニスタンから撤退するように呼びかけた。
2012年8月にはこうツイートしている。
なぜ我々は、アフガニスタンの兵士たちを訓練し続けなければいけないのだ? 彼らは結局、我々の兵士の背中を撃つことになるだろう。アフガニスタンは完全に無駄だ。故郷に帰るときだ!(Time to come home!)
翌13年1月にはアフガニスタン戦争について「数十億ドルを無駄遣いしている」と批判した。
アフガニスタンから撤退しよう。米軍部隊は自分たちで訓練したアフガニスタン人によって殺害され、我々は数十億ドルを無駄遣いしている。ナンセンスだ! 米国を再建しよう。
ただ、トランプ氏は平和的な理念のもとで、戦争終結を訴えているわけではない。一連のツイートで見られるのは、何らのメリットもない戦争に人的・経済的な投資を行い続けることに何の得があるのかという強い疑問である。
ここにはトランプ氏のビジネスマンとしての損得勘定がうかがえる。