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リベラル派ソロスと右派コークが共同出資する「クインシー研究所」

第3部「カム・ホーム・アメリカ―新たな孤立主義の台頭」(3)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 トランプ大統領の掲げるアメリカ・ファーストは、米国の利益を最優先にした孤立主義の影が色濃くつきまとう。トランプ氏は「終わりなき戦争を終わらせる」をスローガンに掲げ、中東地域からの米軍撤退を訴える。背景にあるのは、9.11(米同時多発テロ)以降のアフガニスタン戦争やイラク戦争などの泥沼化した一連の対テロ戦争に疲弊した米国内の世論だ。トランプ氏を突き動かす「カム・ホーム・アメリカ(アメリカに帰ろう)」のムーブメントを解き明かす。

「怪物退治に海外に出て行かない」

 ワシントンの外交安全保障専門家らが最近、注目しているのが、2019年12月に設立されたシンクタンク「クインシー研究所(QI=Quincy Institute)」である。「終わりなき戦争を終わらせる」という政策目標を掲げ、リベラル派の投資家ジョージ・ソロス氏、右派系の実業家チャールズ・コーク氏が共同出資しているからだ。

 我々は、米外交の根本的な方向づけをやり直すため、QIを設立した。これはとても野心的な目標であり、平和的かつ力強く国際社会に関与し、我々がこの数十年間にわたって目にしてきた軍国主義からの離脱を図るものだ。

 20年2月26日、米議会で開かれたQIのフォーラム「世界における米国の新ビジョン」で、QI議長のスザンヌ・ディマジオ氏はこう宣言した。

 QIが掲げるのが、「(米国は)退治するべき怪物を探すために海外に出て行くことはない」というスローガンだ。QIの名称の由来でもあるジョン・クインシー・アダムス(1767~1848年)の言葉である。J・Q・アダムスはモンロー大統領のもとで国務長官を務め、米国の孤立主義の志向を国内外に印象づけた「モンロー宣言」を起草者でもある。

 J・Q・アダムスは1821年の独立記念日に、次のような演説をしている。

 自由と独立の旗が翻るであろう所はどこでも、アメリカの心、祝福、そして祈りがあるだろう。しかしアメリカは、怪物を退治すべく、海外に出ていくことはない。アメリカはすべての人の自由と独立を祈るが、アメリカはもっぱらアメリカ自身の自由と独立の闘士であり、擁護者なのである(佐々木卓也(編)(2018)『戦後アメリカ外交史(第3版)』有斐閣,12)。

 J・Q・アダムスのこの理念を引き継ぐのが、QIだ。

 「QIは米国が軍国主義化して外交手段を軽視している、と考える人々によって結成された。我々の目的は軍事力を抑制するという考えを促進し、世界における米国の役割についてワシントンの人々の考え方を変えることだ」

拡大米議会議事堂で行われたクインシー研究所(QI)のフォーラム=ワシントン、ランハム裕子撮影、2020年2月26日

 QI代表を務めるアンドルー・ベイスビッチ氏(ボストン大名誉教授)はこう強調した(アンドルー・ベイスビッチ氏へのインタビュー取材。2020年1月20日)。

 歴史学者で元陸軍大佐でもあるベイスビッチ氏は、保守派のリアリストとして知られ、他国への介入主義に反対の立場をとる。

 「米国は冷戦後、米国の利益を慎重に考えることなく、軍国主義が政策の中心を占めるようになった。その結果、軍事力の使い方を誤り、数兆ドルを費やし、数十万人の死傷者を出すことになった」

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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