藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)
1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)、日独で取材した『ナショナリズムを陶冶する』(朝日新聞出版)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「静穏な生活は国民の任務」「苦難の時には寄り添いたいものだが、反対のことを」
世界中を揺るがす新型コロナウイルスの感染拡大。ドイツのメルケル首相は3月18日の演説で、「第2次世界大戦以来の挑戦」と呼んで注目されたが、その心髄は「私たちは民主主義社会です」という国民への呼びかけにある。ひとりひとりが果たすべき「任務」をリアルに語って理解を求め、ともに感染拡大を抑えようと説いた演説の全容を読み解く。
メルケル氏はベルリンの首相官邸から13分弱、窓の外の国会議事堂をバックに、テレビ演説の形で訴えた。
2005年以来の長期政権だが、特定の問題で国民に直接訴える演説は異例だ。動画やテキストはドイツ政府のHPでこの通り公開されている。
【英訳テキスト】コロナ問題でのドイツ・メルケル首相の国民への演説
ドイツではまだ、コロナの感染者が出ていなかった2月、私は取材でベルリンなどドイツ各地を訪れていた。テーマはナチズムへの反省に基づく戦後ドイツの民主主義だった。日本へ戻ると、ドイツでも一気にコロナ問題が深刻化した。そんな経緯から、私はメルケル氏の演説に強い関心を抱いた。
演説の内容は、コロナ問題に民主主義国家がいかに向き合うかについて、ドイツはもちろん、日本のあり方を考える上でとても示唆に富むものだった。ドイツ政府の英訳テキストを基本に私が和訳したものを、読み解きを加えつつ紹介する。
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?