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新型コロナに挑む民主主義 メルケル独首相「第2次大戦以来の挑戦」演説の心髄

「静穏な生活は国民の任務」「苦難の時には寄り添いたいものだが、反対のことを」

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

「かつてない試練」

 メルケル氏は冒頭で、コロナ問題という危機にあたり、自身がこうした形で国民に向けて語ることがなぜ民主主義にとって大切なのかを説明する。

 国民の皆さん。

 新型コロナウイルスは、いま私たちの国の日々の生活を劇的に変えています。正常であること、公共の生活、社会の協調。こうした全ての概念がかつてない試練にさらされています。

 何百万人もの皆さんが仕事に行けず、お子さんたちは学校や保育園に行けず、劇場や映画館や店は閉まり、そしておそらく最も困難なこととして、私たち全てにとって当たり前だった社会での出会いをなくしています。こうした状況で、今後について多くの疑問や心配があるのは当然です。

 私はこうした異例の形で皆さんに呼びかけています。それはこの状況において、ドイツ連邦共和国の首相としての私と、連邦政府の同僚すべてが、何を指針としているかをお話ししたいからです。これは開かれた民主主義の一面です。私たちは政治的な決定を透明な形で行い、説明します。私たちの行動が正しくあるように意思疎通を図り、人々が理解できるようにします。

試練克服は「全国民の任務」

拡大コロナ問題でのテレビ演説で「全国民の任務」について話すドイツのメルケル首相=ドイツ政府HPより

 そしていきなり核心に入る。試練の克服は「全国民の任務」と語るのだ。

 メルケル氏はドイツ語で"IHRE Aufgabe"と強調し、HPの動画の字幕でもこの通り、「全国民の」の代名詞にあたる"ihre"を大文字で示している。これが、注目された「第2次世界大戦以来の挑戦」という発言へとつながる。

 この試練の克服を、全ての国民が誠実に自身の任務だと考えるなら、それは可能だと私は確信しています。

 だからこそ、この問題は深刻だと述べさせてください。そして深刻に受け止めてください。(1990年の東西ドイツ)再統合以来、いや、第2次世界大戦以来、私たちの国にとって、連帯の精神をもって行動することがこれほど重要な挑戦はありませんでした。

 この感染症の中で私たちがどういう状況にあり、連邦政府と各州が私たちのコミュニティーを守り、経済、社会、文化の面で悪化を抑えるために、何をしているかを話したいと思います。ただし、なぜすべての皆さんの助けが必要で、それぞれに何ができるかということも伝えたいのです。

 そして、なぜ「全国民の任務」が必要なほどコロナ問題が深刻なのかを説明する。

 まだ治療法が見つかっていない、見つかるまでに感染が拡大すれば医療機関がまひしかねない、そのとき命の危険にさらされるのはあなたの肉親かもしれない――。そうしたことが直裁に語られるのだ。

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)

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