政府がマスクを供給し情報公開が徹底されている韓国でパニックは起きなかった
2020年03月23日
韓国では、コロナの初感染者が出て(1月20日)2か月が経った。
3月21日現在、コロナ感染者数8652人(前日比87人↑)、検査中1万5525人(前日比379人↓)、隔離解除2233人(286人↑)、死亡94人(3人↑)、累積検査数は31万6664人にのぼる。
日用品や食料の買いだめが日本を始め、海外でも起きているらしいが、うちの近くのスーパーでは見られなかった。もちろんトイレットペーパーや日用品の棚が空っぽになるという現象も無かった。
「パニック」の無いことが幸いだ。
コロナの事態がある程度収束する頃になれば、各国の対策の良し悪しが比較されるだろう。
人や物が往来して世界経済が成り立っている今、往来する海外の国の状況をちゃんと把握したいと思うのは当然である。透明性を求めるのは、当然のことだ。
数字というのは、その点で分かりやすい。感染者数、死亡者数、等々一目瞭然だ。
1か月前、韓国では、検査をすればするほど増える感染者数に人々はおののいた。しかし、増え続ける数字を見て、人々は社会にとってより良い行動を模索し始めた。結局、それが自分のためになるからだ。
数字は、人を学習させた。
もちろん、ムン・ジェイン政権に対する批判は相変わらずいろんなところから噴き出している。しかし、一つだけ私が評価するのは、やはり数字である。
毎日の感染者数、隔離者、死者の数に一喜一憂しながら、前日から一挙に100人増加した日には、なぜ増加したのかを知ることが出来る。最近の増える原因は、ほぼ50人前後の集団感染だ。
今日も40人前後の集団感染が確認された。老人ホームで一人が感染し、そこから集団感染したのだという。
「ああ、やっと収束に近づいてきているのに、やっぱり集団感染には、まだ気をつけなければならないんだなあ」とその報道で学習する。
ともあれ、2週間前くらい前から、コロナ一色だった報道も、選挙や地域のニュースなども出だして、余裕が出てきた感じがする。
人も、私たち家族も身動きに制限がある中での暮らし方に慣れてきた。子どもも、長時間のゲームに飽きてきたらしい。自ら1時間は問題集なりを引っ張って来て勉強するようになった。勉強も気分転換の一つになっているみたいだ。
2か月も経てば、閉塞感の漂う社会なりに人々の行動にパターン化がみられる。
外に出る時のマスク、店などに出入りする時の手の消毒。私も常に携帯消毒薬を持ち歩くようになった。
「社会的距離置き(사회적 거리 두기 )」という言葉がここそこで標語化され、私もコーヒーショップで知り合いと会うにしても、テーブル分は十分距離を置いたり、ドアノブ、エレベーターのボタンを直接指で触らないなど、ちょっとしたことに気を付けることも習慣になった。
また、この間、政府からのマスク供給が始まり(1枚1500ウォン:約140円)、当初、ニュースでは薬局でお年寄り同士が争ったりする姿などが報道されたりもしたが、現在は、誕生年の末尾の数で区別する番号制が定着してきて、混乱も争いも無い。薬局によっては長い列を作るところもあれば、すぐ買えるところもある。
とにかく、これまで根拠のない「パニック」に怯えることのなかったことだけでも幸いである。
韓国では、感染した人の動線(どこで感染したか、どこに住んでいるか、どこに行ったか等々)を行政が(アラート)で公表する。知り合いによれば、ネットでもっと調べれば、その人の身辺情報まで出てくる場合があるらしい。その知り合いは、コロナ自体よりそっちの方が恐ろしいと言う。そらそうだ。
韓国では住民登録番号があるので(私には外国人登録番号)、確定申告も税務署で自分の番号を差し出せば、ものの数分で確定申告が終了する社会だ。日本で確定申告に孤軍奮闘していた私にとっては、とてもありがたかったが、反面、個人情報が一目で分かるのだから、恐ろしいことでもある。
さて、コロナで2か月。私の子どもたちは、12月28日から冬休みが始まって、その後、すぐにコロナが始まり、新学期開始が延長され、かれこれ3か月間の「コロナ生活」になる。
前述した番号制で、一人、週に一回やって来るマスクの買える日。今日、下の子は、父親に連れられて、薬局がマスクを売り出す2時を目がけて買いに行った。この作業も今では淡々とこなされていく。
下の子どもは学童保育があるが、学童保育も途中から行かなくなった。コロナの拡散を懸念して、保護者が子どもを学童保育に送らなくなり、「行っても友達がいないから面白くなーい」というのが理由だ。
それで、約3か月、家族4人、24時間生活が始まった。こんな生活の中で、新しい風が吹いた。
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