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封建時代を思わせる「キカイ」音痴で「マヌケ」な安倍政権

このままでは日本全体が沈没しかねない

塩原俊彦 高知大学准教授

 いま、「殿様はマヌケだ」と感じている。殿様は自分を諫めてくれる直言居士を遠ざけ、自分と波長の合う「マヌケ」ばかりを取り巻きにしている。彼らは殿様のご機嫌伺いに奔走し、キカイに強い若者の英知を結集したり、外国での先端的取り組みを取り入れたりする発想そのものがないように見える。御典医らしき人々も間違いだらけなのに、反省することなく殿様にすり寄ることで権威を保とうとしている。

 「マヌケ」は伝染するのか、瓦版売りらしき人々も鎖国時代と同じように、外国の状況に目を閉ざし、最先端の世界のあり様を伝えない。これがいまの日本ではないか。

御典医に問いただしたいこと

3月20日のロンドン  MARCIO DELGADO / Shutterstock.com

 「専門家」という肩書をもつ御殿医らしき人に問いただしたいことがある。専門家であるならば、科学、医学などに力を入れるイギリス屈指の名門大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンの公表している2020年3月16日付の報告書を当然、読んでいるだろう。基本的には、英米向きに出されたものだが、そこに書かれている結果は「多くの高所得国に等しく適用可能である」と記されている。ゆえに、日本にも当てはめて考えることができる。

 まず、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)への対策には、「封じ込め」(suppression)と「緩和」(mitigation)という二つの戦略がある。

 前者は学校や職場などを閉鎖して、あらゆる人々のソーシャル・ディスタンシング(これついては「新型コロナ禍で考えた「ソーシャル・ディスタンシング」」参照)の厳格化によって人から人への感染者を減らすことをめざす。後者は感染拡大の抑制をめざすもので、感染者のみを病院や自宅で隔離する。

 つぎに、図をみてほしい。何もしなければ、5月20日から6月20日に病院で治療を受けなければならない人がピークを迎える(一定の条件のもとにモデル化して算定した結果だ)。

(出所)Impact of non-pharmaceutical interventions (NPIs) to reduce COVID19 mortality and healthcare demand, Imperial College COVID-19 Response Team, 16 March 2020, p. 10.

 興味深いのは、4月20日ころから9月20日ころまでの5カ月もの間、病院での隔離、感染者家族の隔離、接触距離規制をしても、学校閉鎖、病院での隔離、接触距離規制をしても、11月20日から12月20日に要治療者のピークが訪れると予想されることだ。

 感染者家族の隔離のほうが学校閉鎖よりもピーク時の人数を抑制できる。ただ、感染のピークを遅らせることで、治療薬やワクチンの開発時間を稼ぐことが可能となる。

 重要なことは、当初、「封じ込め」が成功するようにみえても、その対策を止めてしまえば、感染者が急増することがありうることを知っておくべきことである。しかも、「封じ込め」は経済活動の停止を意味するから、経済への打撃ははかりしれない。

 いずれにしても、対策を講じる場合、感染者を見つけることが前提になっていることに注意してほしい。日本はいわゆるPCR検査を消極的にしか行っていない(殿様は「検査能力」を強調するだけで検査実施数にふれない)から、「感染者隠し」をいまでも続けていると言われても仕方ない状況にある。世界の感染症対策と真逆なことをしていることになる。日本の専門家に尋ねたいのは、世界の感染症対策と真逆なことをしている理由だ。

 もっと切実な問いもある。この報告書によると、一定の条件をモデル化して計算すると、何もしなれば、英国では約51万人、米国では220万人が死亡すると結論づけられている。事態がきわめて深刻であることがわかる。専門家に問いただしたいのは、この報告書の内容は先進国である日本にも「適用可能である」にもかかわらず、日本がそうならないのか、という問題だ。

言霊信仰を捨てよ

 殿様が「マヌケ」なためか、御典医らしき人も「マヌケ」に感じられる。「最悪の事態を口にしたら、そうなってしまう」という言霊信仰に

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