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新型コロナ対策 日本の喫緊の課題は「ヘリコプターマネー」導入か

いよいよ永久国債の出番しかない?

塩原俊彦 高知大学准教授

 おそらく今後数カ月、世界は「ヘリコプターマネー」の導入に向けた議論が花盛りとなるだろう。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、世界経済が負った傷は深く広い。このため、各国ともに積極果敢な経済対策を打つ必要性に迫れている。こうしたなかで、再び話題になると思われるのが「ヘリコプターマネー」の導入話である。

思考実験「ヘリコプターマネー」

拡大ミルトン・フリードマン(1912-2006)
 この「ヘリコプターマネー」は、ノーベル経済学賞を受けたミルトン・フリードマンが1969年に発表した本(Optimum Quantity of Money, Aldine Publishing Company, 1969)のなかで、思考実験として登場する。

 それは、現金だけが流通手段である仮想の世界で、通貨量が長期間変わらない変動のない状況を想定し、「ある日、仮想の長期定住型のコミュニティにヘリコプターが飛来してすでに流通している量と等しい追加の通貨を空から落とすと仮定しよう」という出だしではじまる。

 この寓話は、連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めたベン・バーナンキが2002年11月21日にNational Economists Clubで行った講演でも取り上げられた。デフレ対策として通貨当局と財政当局との間の協力の重要性を説きながら、大幅減税による財政赤字のファイナンスを中央銀行と財政当局が協力して担う政策(money-financed tax cut)は「本質的にミルトン・フリードマンの有名な通貨の「ヘリコプターによる現金落下」に等しい」と論じたのである。

 そのバーナンキが2016年7月、安倍晋三首相と会談したことから、この前後において日本でもヘリコプターマネーに関する論議がさかんに行われた。欧州議会でも2016年4月に「ヘリコプターマネー:ユーロ圏を悩ますものへの治療法」といった報告が公表されるなど、世界的にヘリコプターマネーに対する関心が高まったのだ。直接、国民に現金を配り、家計を刺激して消費拡大の起爆剤にしようとしたのである。

 ただし、実際にヘリコプターマネーを導入するには財源が必要になる。具体的には、中央銀行による国債引き受け、中央銀行の永久国債買入による財政拡張原資の供給、政府自らによる通貨(政府紙幣)発行――といった方法が考えられる。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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