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トランプは「日韓分断」で困らない

第4部「揺らぐ同盟―究極の取引至上主義」(5)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 「米国は他国からだまし取られてきた」と考えるトランプ氏。米国は同盟国に対してもっとお金を支払うように要求し、長年にわたる損失を取り戻さなければいけない、という信念に一貫してブレはない。トランプ氏にとって同盟とは「ウィン・ウィン(両者が勝つ)」ではなく「ウィン・ルーズ(勝つか、負けるか)」の関係にある。そんなトランプ氏は同盟国によって米国の世界的な覇権が支えられているとは考えず、金銭的な損得勘定でとらえているため、同盟国側の不信を生んでいる。究極の取引至上主義といえるトランプ氏のもと、揺らぎを見せる同盟の今を追う。

中国ロシア、日韓防空識別圏突入で揺さぶり

 2019年7月下旬、ワシントンに衝撃が走った。

 米国の同盟国・日韓両国の防空識別圏が重なり合う東シナ海や日本海上空に中国とロシア機が進入し、初の共同警戒監視活動を行ったからだ。

 中ロは米国の競争国であり、軍事的に激しく競り合う相手である。ワシントンの外交安保関係者らは、中ロが日韓対立の隙を突き、日米韓の防衛協力の揺らぎを注視する試みとして行ったと受け止めた。

 東アジアの安全保障問題に詳しい米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は「中ロは、日韓の緊張関係と米国の同盟国体制の弱体化につけこもうと待ち構えている。我々は中ロの準備態勢を過小評価してはいけない」と警告する(シーラ・スミス氏へのインタビュー取材。2019年8月14日)。

 米政府もこの動きに対抗してメッセージを発した。事態を放置すれば、日米韓の安全保障体制に中ロが浸食することを黙認することになりかねないからだ。

 ナッパー米国務副次官補(日韓担当)は2019年8月初旬、ワシントンでの講演でこの問題について自ら切り出し、「(中ロが)日米韓3カ国の間にくさびを打つようなことがこれ以上あってはいけない」と警告。さらに日韓に対し、「米国は日韓がお互いの関係改善を図る責任があると考えている」と注文をつけた。

拡大大阪で行われるG20へ向けてホワイトハウスを出発する前に、サウスローンで記者団からの質問に答えるトランプ大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影、2019年6月26日

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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