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トランプは「日韓分断」で困らない

第4部「揺らぐ同盟―究極の取引至上主義」(5)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

GSOMIAにトランプは興味なし

 米政府は日韓関係の悪化にこれまでも繰り返し「深い憂慮の念」を表明し、水面下で関係改善を働きかけてきた。米国を突き動かしたのは、韓国側が2019年7月に入り、日本の対韓輸出規制に対抗し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の再検討に言及し始めたことだ。

 日韓GSOMIAは、日韓両国の軍事上の機密情報を共有する仕組みだが、米国を中心とする日米韓三カ国の安全保障体制の柱の一つでもある。

 日米韓安全保障体制は日米韓の三角関係で成り立っている。日米、米韓はそれぞれ同盟関係にあり、強固な結びつきがある一方、日韓は同盟関係ではないため、両国間の結びつきは弱い。そこで日韓にGSOMIAを導入することで両国の軍事的な協力関係を補強し、日米韓安全保障体制を強化するという狙いがあった。このため、日韓GSOMIAは米側の尽力でまとまった経緯がある。

 複数の日米関係筋によれば、米側は韓国のGSOMIA離脱を防ぐため、日本側に輸出優遇対象国のリストから韓国を外す発表を延期するように要請した。米政権高官によれば、米政府は日韓にお互いの報復行為の中止を求める「休戦協定」を進めようとしていた。

 しかし、日本側は冷ややかだった

 日本政府関係者は「慰安婦や徴用工問題でさんざん日本が韓国からやられていたときは何もせず、急に今になって介入してきても遅すぎる。韓国が『休戦協定』を実行する担保も取っておらず、つたない提案だった」と振り返る。

 日本が米政府の要請に振り向かなかった最大の理由は、米政権トップのトランプ大統領に日韓の関係改善に向けた強い意思が見えなかったためだ。

 トランプ氏は2019年7月中旬、韓国の文在寅大統領から直接の関与を頼まれたことを明らかにしたが、「日韓両国首脳の要請があれば」という条件をつけ、慎重姿勢を示した。見方によっては、安倍晋三首相に対決姿勢を続けて良いという「お墨付き」を与えたともいえる。

 その後、日本は予定通り韓国を輸出優遇対象国から除外し、米政府の「休戦協定」調停は不発。韓国は日本への報復措置としてGSOMIA破棄の決断をする事態に陥った。

拡大ホワイトハウスのローズガーデンで共同会見するトランプ大統領(右)と安倍晋三首相=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年6月7日

 日韓は歴史認識という困難な問題を抱えており、歴代の大統領は陰に陽に両国の橋渡し役を担ってきた。2014年、オバマ大統領は安倍首相と韓国の朴槿恵大統領の初会談を仲介し、慰安婦問題の日韓合意を後押しした。ある日米外交関係者は、オバマ政権時代はホワイトハウスや国務省が一体となって日韓両国に働きかけがあったと回想する。

 しかし、アメリカ・ファーストを掲げるトランプ氏は全く異なる。最大の関心は、同盟国同士の団結ではなく、相手国からいかにお金を多く支払わせる取引(ディール)をまとめることができるかという点にある。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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