大統領が野戦病院から演説。「外出禁止」も延長。国民の間に高まる「戦時下」の意識
2020年03月29日
安倍晋三首相が3月28日、記者会見して国内の新型コロナウイルスの感染拡大の状況について「まだギリギリ持ちこたえている。少しでも気を緩めれば、いつ急拡大してもおかしくない」と強調。「この戦いは長期戦を覚悟していただく必要がある」と述べ、イベント自粛を求めている状況などへの理解を求めた。
ただ、日本では東京五輪の1年延期を決めた後も、通勤電車は依然、混み合っていて、花見に繰り出す市民もいたという。小池百合子東京都知事が「感染爆発の重大局面」にあるとして3月25日、週末の「不要不急の外出自粛要請」を求めたため、週末の都内はさすがに繁華街が閑散としたようだが、4月15日までの約1カ月の「外出禁止」を実施中で、シャンゼリゼ大通りから、文字通り人影が消えたパリに住んでいると、「自粛」でいいのかと心配になる。日仏の「危機管理」の相違を肌身で感じる。
正体不明、ワクチンなし、治療薬なしの強敵に対し、16日の前回演説では、「戦争」という言葉を6回も発し、国民に「挙国一致」の動員を呼びかけた。17日正午からは「戦時下」並みの「外出禁止令」が出されたが、今回は軍隊を動員しての野戦病院からの生中継で、「戦時下」の状況をヒシヒシと感じた国民は多そうだ。
実際、フランス内の死者は約2000人、感染者が3万人を超えた。イタリアの死者約1万人(3月27日現在)ほどではないが、事態はいよいよ深刻になっている。野戦病院(集中治療室40)が設置されたのは、フランス東部アルザス地方ミュルーズ内の軍病院近くの空き地。同地区は感染者、死者が最も多く、すでに数百人が死亡、約1000人が集中治療室で治療中で、3人の医師らも感染して死亡した(同)。
大統領は今回、「国民の一致団結」を呼びかけると同時に、強敵と戦闘中の全国民に感謝もした。まず、「第1列」、文字通り不眠不休でCovid-19と戦っている医師、看護師、付添人ら医療関係者だ。次いで、「第2列」、救急車や消防車などその周辺で医療関係者を支援する人たちだ。「第3列」は「外出禁止令」を遵守し、自宅でパソコンなどの遠隔操作で、「必要不可欠」な仕事に従事する人や、自宅在住者だ。大統領は「第1列、2列、3列」と軍事用語を使用し、「戦時下」を強調もした。
「外出禁止令」が発布される前、すでに学校封鎖に続いてレストラン、カフェ、ディスコの閉鎖はもとより、100人以上の、そして5人以上の「集会禁止令」が出ており、映画館も劇場も閉鎖された。生活に必要不可欠な「食料品店」と「薬局」のみが開店を許可されているが、人と人とが1㍍以内に接近するのは禁止なので、近づきすぎるとガードマンが接近しないように警告を発する。握手、ハグなど当然、厳禁だ。
外出するときは、政府発行の「証明書」の携帯も義務付けられている。「証明書」はインターネットの「政府」のサイトで入手し、印刷して書き込みをする。(パソコンも印刷機もない者は手書きで「証明書」作成が可)。職業用と個人用の2種類あり、いずれも、「性別、氏名、生年月日、現住所」と「外出目的」を項目の中から選んで印をつけ、「署名」する。
「署名」した以上、虚偽の記入があれば、刑罰に問われる。携帯していない場合は、罰金135ユーロ(1ユーロ=約120円)。2週間以内に再犯した場合には1500ユーロ、4回になると最高で3700ユーロ、6カ月の禁固刑だ。
大統領や保健相、医療関係者が声を涸(か)らして、「外出禁止」がCovid-19から自分と他者を保護し、「蔓延」を防ぐ唯一の方法だと叫び、政令まで発布し、罰金刑まで科すのは、見方を変えれば、それだけ、フランス人が自分勝手、制御不能だからだ、といえる。
実際、「外出禁止」令が出た翌日の3月18日には1日だけで、4095人の違反者(内務省)が出た。
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