“文集砲”で再燃した森友事件を世論は決して忘れていない
2020年03月28日
「週刊文春」の報道によって、森友学園事件が再び炎上しつつある。
3月18日、上司から決裁文書の改ざんを強要されて、自殺に追い込まれた財務省近畿財務局の赤木俊夫氏の妻が覚悟を決めて大きく一歩を踏み出した。国と佐川宣寿元財務省理財局長に対して、損害賠償請求訴訟を大阪地裁に提起したのだ。
妻によると、「元はすべて佐川氏の指示」だと言う。「週刊文春」の取材には、亡き夫、赤木俊夫さん(享年54)の「手記」や「遺書」も公開した。
私は、手記や遺書が掲載された「週刊文春」(2020年3月26日号)を、息をのんで精読した。全文から受ける印象から、故・赤木さんの言うことに虚偽はないと確信した。そして、赤木夫妻の凜(りん)とした言動に、あらためて深い敬意を抱くにいたった。
これに対し、財務省の官房長は国会答弁で、「新たな事実は見つかっていないと考えられる。再調査を行うことは考えていない」と逃げ腰の姿勢を示した。麻生太郎財務相も「関与した職員に厳正な処分を行い、私自身も閣僚給与を自主返納した」と、この件は決着済みであることを強調した。だが、関与して処分されたはずの人たちが“栄転”したと報道され、世論の怒りが沸騰している。
肝心の安倍首相は、記者団から手記に関する感想を聞かれ、「財務省で事実を徹底的に明らかにした。改ざんは二度とあってはならない」とし、自らの責任についての質問には何ひとつ答えなかった。
こうした発言から伺えるのは、要するに、野党や世論が強く要求する“再調査”はしないで、断固として押し切るということに他ならない。
首相や財務省のこうした対応を受け、赤木夫人はさらに直筆のメッセージを公表した。それは問題の核心を突き、極めて明快である。
その冒頭で、「安倍首相は2017年2月17日の国会の発言で改ざんが始まる原因をつくりました」と断定しているのが目をひく。
その発言とは、テレビで何度となく放映されている“あの場面”だ。
「私や妻が関係しているということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい。まったく関係ない」
これまでも、この首相発言が文書改ざんへの“号砲”のように言われてきたが、今回、改ざんに着手した当事者の妻がそれを確認したことになる。
もし、ある重要人物が「暑いな」とつぶやけば、周辺の誰かが明示的な指示がなくても、慌ててクーラーのスイッチを入れるだろう。大声で強く叫べば、
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