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新型コロナ急拡大で小池都知事の言う「首都封鎖」は本当に必要か

シミュレーションから浮かぶ二つの可能性。究極の戦術をとる前にするべきことは

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

新型コロナへの緊迫感が高まる東京都

 上述の通り都内では、小池都知事の記者会見以降、新型コロナウイルスに対する緊迫感がかつてない程に高まっています。

 しかし、落ちて着いてデータを見てみると、3月29日現在の日本の感染者数は1499人、東京は299人です。人口10万人当たりの感染者数で比較すると、スイス178.9人、イタリア155.6人、ドイツ70.4人、アメリカ38.7人、韓国18.9人に対し、東京は2.6人、日本全体で1.3人で、東京はイタリアの60分の1、ドイツの27分の1、アメリカの15分の1、韓国の7分の1に過ぎません(参考)。

 また、イタリア、ドイツではロックダウンを行っていますが、韓国はロックダウンを行っていません。率直にいって今現在、「緊急事態宣言ギリギリ」でロックダウンをしなければならない、客観的根拠はないのです。

 とはいえ、3月24日に17人だった感染者数が3月25日に41人にと一気に増えると、「倍々で指数関数的に今後さらに患者数が増えるのではないか?」という不安は生じます。感染症は「指数関数的」に拡大すると一般に信じられていますので、その心配は無理からぬところもあります。

 しかし、感染症はかかった人の多くは一定期間後に治りますし(新型コロナウイルス感染症では概ね3週間前後)、免疫が形成された人は以後罹患しなくなりますので、指数関数ではなく釣り鐘型のカーブ(流行曲線)を描いて感染が拡大し、ピークに達した後は減少します。つまり、新型コロナの感染がこれからどこまで拡大し、感染者数が増えるのかを考えるに当たっては、単に現在の患者が急増したから「今後倍々と増えていく」というのではなく、現在のデータから流行曲線を予想し、何時、どの程度のピークになるかを考える必要があるのです。

拡大いつもは多くの人が行き交う銀座も、外出自粛要請を受けて閑散としていた=2020年3月28日午後2時、東京都中央区

新型コロナの流行を予測できる数理モデル

 では、現在のデータから、どの様な流行曲線が予想されるでしょうか。

 3月19日の専門家会議でも説明に使われたので、皆さんも流行曲線を見慣れてきたと思いますが、多くの方は一体どのような数値からどの様な流行曲線が導き出されるか、ピンとこないと思いますので、私のブログ記事「新型コロナ感染シミュレーション・ワークシート(フリーダウンロード)」に最も基礎的な数理モデルであるケルマック―マッケンドリック数理モデルの解説と、このモデルに沿ってシミュレーションができるエクセルのシミュレーション・ワークシートをアップしました。興味のある方はご一読いただき、ワークシートをダウンロードして色々な数字を入力して流行曲線の変化を確認して頂ければと思います。

 この数理モデルでは、一人の患者が治癒するまでに何人の患者に感染させるかを示す基本再生産数(R0)と、患者が感染してから治癒するまでの期間(D)、現在の人口(N)、現在の感染者数(I)、現在の感染済者数(R)を決めればその後の流行曲線を描くことができます。そして、D(新型コロナではほぼ20)とN(東京は13953577人)はウイルスの性質と対象となる集団の人口で決まりますので、実質的な変数はR0、I、Rになります。

 ここに色々な数字を入れてシミュレーションしていただくと分かりますが、

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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