阿部 藹(あべ あい) 琉球大学客員研究員
1978年生まれ。京都大学法学部卒業。2002年NHK入局。ディレクターとして大分放送局や国際放送局で番組制作を行う。夫の転勤を機に2013年にNHKを退局し、沖縄に転居。島ぐるみ会議国連部会のメンバーとして、2015年の翁長前知事の国連人権理事会での口頭声明の実現に尽力する。2017年渡英。エセックス大学大学院にて国際人権法学修士課程を修了。琉球大学客員研究員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
米軍基地に到着した米兵は日本の検疫を受けずに町に足を踏み入れることができるのだ
3月28日、米空軍嘉手納基地(沖縄県)は、嘉手納基地所属の空軍兵2人について、新型コロナウイルスへの感染が確認されたことを公式フェイスブックで発表した。
報道によれば、沖縄県が一報を受けたのは1人目の感染を軍が発表したおよそ10分後で、「外務省沖縄事務所からフェイスブックを見るよう」連絡があり、さらにその30分後に沖縄防衛局から連絡が届いたという(沖縄タイムス 3月29日朝刊)。
新型コロナウイルスの感染が米国で広がりを見せる中、日常的に在日米軍の兵士やその家族、関係者と接する機会の多い沖縄県民は、密かに在日米軍内での感染を脅威に感じ、懸念していたのではないだろうか。28日の発表によってその恐れは現実のものとなった。その後、31日午前には最初の兵士の家族の感染が確認されたとフェイスブックで公表されている。
沖縄では地元のショッピングモールや映画館、屋内外のレジャー施設やレストランで日常的にアメリカ人と接することがある。基地周辺の市町村で暮らす県民にとっては近所にアメリカ人家族が住んでいることは珍しくない。基地内で働く県民も多い。
そのため在日米軍基地や施設内でもし感染が広がれば、フェンスを越えて沖縄県民のコミュニティにも感染が広がる可能性は高い。
しかし、今回の感染確認が私たちに突きつけている脅威は、単なるフェンスを越えた感染拡大のリスクだけではない。それは日本の検疫体制に大きな穴が存在し、公衆衛生に関する重要な情報について、日本国民は目隠しをされた状態で日々を過ごしているという実態である。