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新型コロナ対策でいま求められる「戦略」と「戦術」

戦略と戦術のミスマッチが目立つ日本。政治的リーダーに不可欠なこととは

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

拡大新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相(中央)=2020年4月1日午後6時26分、首相官邸

 先般(3月29日)、論座で「公開」した「新型コロナ急拡大で小池都知事の言う『首都封鎖』は本当に必要か」で、ケルマック-マッケンドリックモデル(SIRモデル)によるシミュレーションに基づいて、新型コロナウィルス感染の拡大阻止において重要なのは、一人の患者が治癒するまでに感染させる患者数を示す基礎再生産数R0(もしくは時々刻々の再生産数である実効再生産数Rt)であり、それぞれのR0の値によって、感染拡大の様相がどのように異なるかを述べましたが、本稿ではこれを前提として、今求められる新型コロナウィルス対策について論じたいと思います。

感染症対策の四つのかたち

 私見になりますが、新型コロナウィルス感染症対策は、戦略目標とするR0の値によって以下の4つに分類できると考えます。

①R0=0(R0=0戦略)
②0<R0<1(R0<1戦略)
③1≦R0<2(R0~1戦略。ただし”2”という数字に大きな意味はない)
④R0≧2(R0≧2戦略。ただし”2”という数字に大きな意味はない)

 ①の「R0=0戦略」は、いわゆる「封じ込め」であり、「水際対策」を行って患者を見つけ出し、ただちに隔離して誰にも感染させずに、R0=0とすることで感染の収束を図るものです。

 ②の「R0<1戦略」は、現在多くの国が行っている「ロックダウン」で、R0を1以下に抑え込むことで感染を収束させるものです。R0が1以下になると、新型コロナ患者の治癒期間を20日とすると、(もちろん様々な変数によりますが)おおむね20日間で感染者数は3分の1ほどになり、早期に鎮圧できます。

 ③の「R0~1戦略」は、おそらく日本が現在、暗黙のうちにとっているもので、R0を急いで1以下にはすることは追求せず、「自粛」や「クラスター対策」でR0をR0~1に保つことで感染拡大の速度を抑え、同時に一定程度の感染の拡大を許容することで免疫を持つ人を増やし、時の経過とともにRtが1を下回ることで感染が鎮圧されるというものです。この戦略は手段としてはマイルドですが、鎮圧までに長い時間を要し、対策を継続できるか否かが鍵となります。

 ④の「R0≧2戦略」は、一時イギリスが採用すると取りざたされたもので、感染の拡大をあえて放置し、社会全体が「集団免疫」を獲得することで、感染を収束させるものです。当然のことながら、収束までには多くの患者と、相当数の死亡者が生じることになります。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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