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コロナ禍で広がるWeb面接に問題はないか

AIによる感情認知の最前線

塩原俊彦 高知大学准教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行で、「就職戦線に異常あり」という状況になっている。その一つがウェブ(Web)面接の急増という現象だろう。

 これには、録画動画面接とライブ面接の2種類がある。このサイトでは、「AI活用の動画面接にはどんな問題点があるのか」という記事のなかで、「無定見、無責任な企業による利用には規制が必要だ」と論じたことがある。ここでは、海外での最前線事情を紹介しながら、Web面接の問題点について論じてみたい。

進む「嘘を見破る」研究

拡大Shutterstock.com

 この考察を書くきっかけは、ロシアの有力雑誌『エクスペルト』(No. 13, 2020)に「ロシアの会社、F2FGroupは音声と表情によって嘘を見分けるための技術を開発した」という記事が掲載されたからだ。同社は、たとえば面接などで仕事に対して潜在的により正直な候補者を採用するのを支援するサービスで利益をあげようとしている。

 欧米ではとくに科学的に「嘘を見破る」研究が進んでいる。その延長線で、わずかな表情の変化などを見抜いて嘘を言っていないかを判断し、不誠実な人物をチェックする技術がすでに開発されていることになる。

ウソ発見の五つのタイプ

 嘘を発見する技術には、主として五つのタイプを調べるものがある(ガーディアン2019年9月5日)。言葉の中身、言葉にする方法、身振り、心理状態、脳がそれだ。

 たとえば、オンラインによるデートクラブのビデオファイルでは、嘘をついている人々は“I”とか “me” とか “my”といった言葉をより頻繁に使用するらしい。音声圧力を分析することで、嘘を見破ることができるという見方もある。嘘がうまくいったときにわずかに現れるアンドの表情とか、自然を装って反対のことをやってみせようとするとかといった身振りもある。心理状態によって、血圧、呼吸回数、発汗量などに変化が出ることもある。さらに、電子脳造影図を使って脳の変化から嘘を見破る研究もある。

AIによる「作用認知」

 感情を、AI技術を使って認知することを「作用認知」(Affect Recognition)と呼ぶことがある。これこそ、嘘を見破ることにもつながる最先端技術ということになる。ニューヨーク大学のAI Now研究所がまとめた報告書によれば、まだあやふやな基礎しかないにもかかわらず、「作用認知産業」は急成長しており、2018年の感情発見・認知市場は120億ドルにのぼり、2024年までに900億ドル産業になると予測されている。 

 すでに、ビデオカメラ分析を通じて怒り、恐怖、寂しさのような感情を区分できる製品をカジノ、レストラン、小売業者、不動産ブローカー、観光業などに販売するカイロス(Kairos)という会社が存在する。アマゾンは、同社のクラウドサービス、AWSで提供する顔認証ソフトのRekognitionによっていまでは、これまでの七つの感情分類に加えて「恐れ・不安」も検知可能となったとされている。

 先の記事「AI活用の動画面接にはどんな問題点があるのか」では、米国のハイアビュー(HireVue)という会社が実際に「AIによる評価」(AI-driven assessments)というシステムを開発し、デジタル面接を通じたAI判断による選考方法を売り込んでいることを紹介した。ほかにも、VCVも同じようなサービスで商売をしている。両社とも、日本に進出済みであり、日本でのWeb面接拡大の火付け役としての役割を果たしている。

 なお、コールセンターを支援するために、音声から感情を読み取るコギト(Cogito)やエンパス(Empath)といった解析プログラムも販売されている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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