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「怒り」を訴えたれいわ・木村英子参院議員は何を伝えたかったのか(下)

「国難」の時、あからさまになる「隠されている問題」

松下秀雄 「論座」編集長

参院国土交通委員会で質問するれいわ新選組の木村英子さん(右)。介助者が挙手をした=2019年11月5日午後3時34分拡大参院国土交通委員会で質問するれいわ新選組の木村英子さん(右)。介助者が挙手をした=2019年11月5日午後3時34分
 

 障害のある人もない人も、同じように社会に参加できるよう、壁を壊そう。差別をなくそう。そのために、木村英子参議院議員は障害のある当事者の声を、政治に反映させようとしています。しかし、壁を壊そうとする木村さん自身、さまざまな壁に囲まれています。その壁は何か。どうやって壊していくのか。木村さんのインタビューの(下)です。

プロフィール

木村英子(きむら・えいこ) 参議院議員。1965年、横浜市生まれ。生後8カ月で歩行器ごと玄関から落ち、重い障害を負う。18歳までの大半を施設と養護学校で暮らしたが、19歳の時に東京都国立市で自立生活を開始。全国公的介護保障要求者組合・書記長などを務める。2019年7月の参院選に、れいわ新選組から立候補して初当選。

重い障害のある人は「選挙運動をするな」?

インタビューに応える木村英子さん=2020年3月23日、東京都多摩市拡大インタビューに応える木村英子さん=2020年3月23日、東京都多摩市

 ――木村さん、舩後靖彦さんのおふたりは、社会保障にかかわる政策を所管する厚生労働委員会には入れず、国土交通や文教科学委員会に所属しています。これも、国会でつきあたった壁のひとつなのでは。

 それは大きな壁ですね。

 ――重い障害のある人を対象とした「重度訪問介護」のサービスを使えるのは私生活に限られ、仕事をする時などは対象外になっています。木村さんはこの制限をなくし、介護を必要とするすべての障害のある人が、社会に参加できるようにすべきだと唱えてきました。この問題でも、満足のいく成果は出ていないとお考えですか。

 重い障害のある人たちにとって、健常者と同じように当たり前に生きていくために、いちばん何が必要かというと介護なんです。ところが、私たちが国会議員になって登院する時、国会活動中は重度訪問介護を使えないという壁が立ちはだかりました。もし舩後さんや私が国会議員にならなければ、この問題は闇に葬られていたと思うと、おそろしいなという感覚を抱きましたね。

 木村さんと舩後さんの国会活動中の介護費用は、当面の措置として、参議院が負担している。2人の問題提起をきっかけに、重い障害のある人の就労支援策を検討している厚生労働省は、重度訪問介護の見直しを先送りし、介助者を用意した企業への助成金拡充などで対応する案を労働政策審議会に示した。

 重度訪問介護を使えない根拠は、厚生労働省の告示523号です。仕事などの「経済活動に係る外出」や、通学などの「通年かつ長期にわたる外出」、さらに「社会通念上適当でない外出」を除くと記されています。

 その523号の解釈が、自治体によって違うんです。たとえば、飲酒を伴う外出や、政治活動などを「社会通念上適当でない外出」だといって認めず、週2回以上の習い事もだめだという自治体もあって、さまざまな制限がされている。解釈が違うことによって、障がい者の行動が制限され、人権が奪われている現状があります。

 現状を変えないと、障がい者が健常者と同じように社会参加するのは難しい。だから、やっぱり厚生労働委員会に入って、重度訪問介護を、人権を守る制度として確立しなきゃいけない。けれど、厚労委員会には入れないし、私たちもたった2人の会派ですので、なかなか難しい。いろんな党や会派の人たちが一緒になって、改善していただけたらありがたいと思います。

 ――昨年の参院選では、得票にかかわらず優先的に当選できる「特定枠」を利用して、議席を得ました。

 社会参加が難しい人が国会議員になるのは、特定枠を使わないと実現できないことですね。

 ――特定枠がなければ、自分で票を集めなければならないわけですが、重度訪問介護が政治活動・選挙運動に使えないと、それも難しい。社会参加の壁は、政治参加の壁になるということですね。

 極論すれば、重度訪問介護を使っている障がい者は選挙運動をしてはいけないということになる。それは遅れている考え方じゃないかと思うんですよね。

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筆者

松下秀雄

松下秀雄(まつした・ひでお) 「論座」編集長

1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。

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