松下秀雄(まつした・ひでお) 朝日新聞山口総局長・前「論座」編集長
1964年、大阪生まれ。89年、朝日新聞社に入社。政治部で首相官邸、与党、野党、外務省、財務省などを担当し、デスクや論説委員、編集委員を経て、2020年4月から言論サイト「論座」副編集長、10月から編集長。22年9月から山口総局長。女性や若者、様々なマイノリティーの政治参加や、憲法、憲法改正国民投票などに関心をもち、取材・執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「国難」の時、あからさまになる「隠されている問題」
――遅れているだけではなく、福祉が切り詰められていく中で、より厳しくなっているという感覚をお持ちですか。障がい者総合支援法には、障害のある人も介護保険を優先して利用する原則が記され、障害のある人の介護保障と、高齢者向けの介護保険を統合していこうという動きがありますが。
そうですね。社会参加を促進しなければならない障がい者や児童に対するケアと、高齢者の方たちが老後を過ごすためのケアはまた全然違うと思うんです。独立している制度が一つにされてしまったら、それぞれのニーズにあった福祉はできなくなりますよね。それを強引に一緒にしちゃおうとしているので、かなり混乱が起きています。それこそ、高齢の障がい者が介護保険を利用することになって、社会参加を制限されるだとか。そういう流れの大きな理由は、予算の削減だと思います。
――福祉が切り詰められて、社会参加を制限され、生きていくことが難しくなる人もいる。それをなんとかしたいということも、立候補の理由だったのでしょうか。
そうですね。自治体によっては介護時間が足りず、1日に1回しか食事を食べられなかったり、トイレも我慢したりする状況がありますから。私たちの現状を聞いてもらって、先輩の議員のみなさんにアドバイスをいただき、一緒にいい方法を見つけていけたらいいなと思っていたんです。でも、それ以前に協議会への呼びかけもいただけないのはどういうことなのかなと思って、ああいう記者会見をさせてもらったんです。
――それでも、昔に比べればよくなっているのでしょうか。
昔はいまよりも介護制度は整っていなかったので。毎日、いろんな大学に介護者を探しにいって、夕方、学生と駅で待ち合わせをして、そこから私の生活がスタートするような感じでした。いろんな大学生がきてくれて、彼女たちがいたから生きてこられたと思っています。
いまは、まだ少ないけれど制度的には24時間介護が認められている自治体もありますし、介護内容についても、だいぶ進んできたとは思いますが、それでもまだまだ。制度が充実すればするほど中身の規制が厳しくなって、自由度がなくなるということもありますね。お金で換算するから、なんでもかんでもというわけにはいかないという問題があるのでしょうけど、523号みたいに人としての行動を制限すると人権に触れます。それが生きていく弊害になっている現実があるので、人権の制限はあってはならないと思いますね。
重い障害のある人を対象にした介護保障は、1970年代に施設での虐待や非人間的な扱いに抗議する障害のある人たちが都庁前に座り込み、地域で生きるための介護を求めて運動したことに始まり、現在の国の制度になっていった。