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コロナ禍でアジア初の国境封鎖。イスラム国家マレーシアの厳戒態勢下の知恵

モスクでの大規模礼拝による感染者急増と政府の意思決定で高まった国民の危機意識

海野麻実 記者、映像ディレクター

アプリでメッカの位置を確認して祈る

 こうした厳戒態勢下で、イスラム教を国教とするマレーシアでは、人々はどのように外出禁止令下の生活を送っているのだろうか。

 クアラルンプール市内に暮らすマレーシア人カマルディンさん一家では、祈りを自宅で捧げるようになった。小さな祈り用マットを寝室に敷き、スマートフォンのアプリでメッカの位置を確認、それぞれ静かに祈りの言葉を呟(つぶや)く。

 「確かに寂しいですよ。私たちイスラム教徒にとっては、モスクに行って礼拝することはとても重要な意味を持つのです、なぜなら信者同士が互いに集い、彼らと信仰を共にして、見知らぬもの同士でも握手を交わして労(ねぎら)う。こうして一体となって祈りを捧げることに深い意味があるのですが、しかし、アッラー(神)はこのような緊急事態においては、モスクに出掛けて祈らなくとも良い、とご教示くださっているのです」と、穏やかに話す。

「誰かのためになることをする、それがアッラーの教え」

拡大外出が制限されるなか、自宅の大掃除をしたマレーシア人女性 「タンスの奥にあった不要な服をまとめて寄付に回したい」と微笑んだ=2020年3月下旬(筆者撮影)
 マレーシアで感染が急拡大した最大の原因は、モスクでの大規模礼拝により引き起こされた集団感染(クラスター)だ。1万6000人が参加したと言われているこの大規模礼拝の参加者から、家族、そして近隣の住民や知人、そしてそのまた家族へと、連鎖的に感染が拡大していることが指摘されている。今や感染者2908人、死者数45人のうち半数以上が、その礼拝の出席者、もしくは濃厚接触者であるのが現状だ。そのため、モスクは全て閉鎖され、自宅で祈りを捧げることが強く推奨されている。

 妻のシティさんは、この外出禁止のもと、少しでもイスラムの教えに沿って人々のためになることがしたいと、自宅にあった大量のマレー風の服を整理。恵まれない人たちへの寄付に回す予定だという。

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筆者

海野麻実

海野麻実(うみの・まみ) 記者、映像ディレクター

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやForbes、共同通信47Newsなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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