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新型コロナで発出された緊急事態宣言と国民の期待との間の大きな懸隔

緊急事態宣言で新型コロナウィルスが鎮圧できるわけではない。宣言に潜む危うさとは

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

拡大新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、緊急事態宣言を出す安倍晋三首相(右から2人目)=2020年4月7日午後5時43分、首相官邸

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三総理は4月7日、有識者による諮問会議にかけたうえで、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の1都6府県に期限1カ月の緊急事態宣言を出しました。4月4、5日に行われた直近の世論調査で国民の8割が緊急事態宣言を出すべきと答えており(JNN世論調査)、政治的決断としては事実上、他に選択肢はないものと思われます。

 一方で、この緊急事態宣言によって起こるであろうことは、おそらくは国民の多くが期待していることとは大きな懸隔があり、その運用には極めて細心の注意を要すると思いますので、本稿ではこれについて論じたいと思います。

緊急事態宣言が発令されるとできる措置は

 さる3月14日に与野党合意の上で改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)」によると、

第32条(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
1 政府対策本部長(総理大臣)は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(新型インフルエンザ等緊急事態)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(新型インフルエンザ等緊急事態宣言)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
① 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
② 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域
③ 新型インフルエンザ等緊急事態の概要

と定められています。

 この条項により緊急事態宣言がなされると、都道府県対策本部長(都道府県知事)(条文によっては市町村対策本部長=市町村長=)は、緊急措置として以下の措置がとれるようになります。

第45条 外出自粛要請。多人数向け施設の使用制限、イベントの開催制限
第46条 住民に対する予防接種の実施
第47条 医療、衣料品の確保
第48条 臨時医療施設の設置
第49条 臨時医療施設の為の土地の使用
第50条 物資及び資材の供給の要請
第51条 備蓄物資等の供給に関する相互協力
第52条 電気及びガス並びに水の安定的な供給
第53条 運送、通信及び郵便等の確保
第54条 緊急物資の運送
第55条 物資の売渡の要請
第56条 埋葬及び火葬の特例
第57条 私権の保全
第58条 金銭債務の支払猶予
第59条 生活関連物資等の価格の安定
第60条 融資

 つまり、「緊急事態宣言」によって都道府県は、私権の制限と統制経済的な手法を含む、大きな権限を手にする事になるのです。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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