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新型コロナ:日本は、欧米型、中国周辺国型のいずれか

「早め、広め」という危機対応の鉄則、SARSの経験が分岐点に

花田吉隆 元防衛大学校教授

SARSの経験を生かした中国周辺国

 さて、今、感染の中心は欧州と米国だ。欧州も米国も油断した。中国にウイルスが蔓延した時、欧州は対岸の火事とした。欧州が危機に陥った時、米国は、これは欧州の問題だと思った。いずれも初動で遅れたことが致命的になる。

 これに対し注目されるのが、中国周辺の国、地域だ。4月4日現在、感染者数が、台湾(348人)、シンガポール(1114人)、香港(845人)、ベトナム(237人)と、いずれも中国との往来が最も頻繁であるにもかかわらず感染者数は低いままだ。中国からの来訪者がウイルスを持ち込む機会は十分あった。どうやって効果を上げているのか。これに関し、既に多くの報道がある。最大公約数をまとめれば、検査の徹底実施、外国人の入国制限強化、IT利用による感染者追跡の実施といったところだ。韓国は一時、感染爆発があったが、軽症者を特定施設に隔離し、病院の負担軽減に成果を上げているのも注目だ。

 しかしここで注目したいのは、他でもない、これらの国、地域が2003年のSARS禍に見舞われたということだ。台湾で、感染症対策を主導する陳建仁民進党副総統や陳時中、衛生福利部長は、このSARSの時の経験をもとに今回、新型コロナ対策の陣頭指揮を執る。これらの国、地域では、SARSの経験があったため、今回武漢で感染が発生した早い段階で事態の深刻さを認識し、「早め、広め」の対策を講じることができた。これに対し、欧米は2003年、SARSの災禍を免れた。その結果、今回、初動対応が出遅れた。

 「早め、広め」の対策は、国民が、これを受け入れ、政府の指示に従うことが重要だ。しかし人々は、火の手が身近に迫って初めて危機の深刻さを認識する。危機が燃え広がらないうちは、政府の指示を深刻に受け止めない。今回初めのうち、仏伊の国民は外出禁止令に従おうとせず、政府はやむなく罰則を強化せざるを得なかった。

 国民が政府の指示に従うか否かは、国民の政府に対する「信頼度」による。欧州の中には信頼度がお世辞にも高いといえない国があり、そういうところでは、国民を政府指示に従わせるのは至難だ。

 しかし、中国周辺国、地域の人々の対応は信頼だけでは説明できない。むしろ、SARSの記憶が鮮明に残っていたことが重要だ。人々は2003年、感染症の恐怖を、身をもって知った。今回、政府のいち早い対応が国民の間にすんなり受け入れられていったのは、この事実を抜きにしては説明できない。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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