なにより避けたい医療崩壊。緊急事態宣言は東京・大阪の「武漢化」を防げるか
2020年04月09日
4月7日、安倍晋三総理は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に関する記者会見で、医療従事者へ感謝の意を表したうえで、「医療現場を守るためあらゆる手を尽くす」と述べた。医療崩壊の回避を、緊急事態宣言の目的として明確に位置付けたのである。
ここでいう医療崩壊とは、医療需要の急増によって医療サービスの受給バランスが崩壊し、医療を必要とする人に適切な医療サービスが供給できなくなる状況を指す。
医療崩壊という言葉が、我々にとって身近なものとなったのは、病院で長蛇の列をなす武漢の人々の様子が映像で伝わってきてからの事だろう。2019年12月に中国湖北省武漢市で新型コロナウイルス疾患(COVID-19)が確認されて以来、医療崩壊という言葉がメディアを賑わせ続けてきた。
では、こうした医療崩壊が起こると、どのような結果を招くのであろうか。
その具体例として、新型コロナウイルスの感染拡大が招いた医療崩壊が、武漢では中国他都市の5倍以上の致死率いう悲惨な結果を招いたことが挙げられる。そこで本稿では、武漢の例を教訓に、医療崩壊回避の重要性について考察したい。
武漢の新型コロナウイルス被害は、中国全土でも飛びぬけている。中国では、2020年4月6日時点で合計81740症例のCOVID-19が報告されており、そのうち、武漢では50008症例(中国全体の61.8%)が発生、武漢を除く湖北省の症例も17795例(同21.8%)である。さらに、COVID-19による中国の死者3331人のうち、2571人(同77.2%)が武漢での死亡例であり、武漢を除く湖北省での死者も641人(同19.2%)を数える。(中国国家衛生健康委員会)
累積数もさることながら、武漢ではCOVID-19による致死率が飛びぬけて高いのが特徴的だ。中国国家衛生健康委員会の公表するデータをもとに計算すると、武漢の致死率(CFR:死者数/報告患者数)は5.1%に達する。これは、湖北省を除く中国全土の0.9%をはるかに上回る水準である。
湖北省や中国各地の他都市と比較して、武漢ではなぜ致死率がそこまで高くなったのだろうか。
その答えは、患者数と死者数の推移を武漢と他都市とで比較してみると見えてくる。
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