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コロナ対策 抗体検査を急げ

日本のお粗末な対応を是正するには、他国に学ぶしかない

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年4月2日付の「ニューヨークタイムズ電子版」は、「米食品医薬品局は米国で初となるコロナウイルス抗体検査を承認」という記事を掲載した。

 血液を採取して、新型コロナウイルスに対する抗体をもっているかを判断する検査(血清学的診断)をするものだ。抗体があるということはすでに感染したことを意味するが、感染後、まったく症状が出なかったり、軽度ないし中程度の症状が出ても短期間で回復したりする人も多い。そういった人々のなかには、すでに免疫がしっかりと根づき、他者に感染させる懸念なしに普段通りの社会生活を営んでもかまわない人がいるはずだ。その判断をくだせる抗体検査が可能となれば、社会的な不安を払拭することにつながる。

 抗体検査はすでに中国、シンガポール、韓国で利用されている(4月2日付「エコノミスト」)。4月1日付の「デイリーメイル」によると、英国公衆衛生サービスは中国から200万個の抗体検査を購入した。3月25日付の「ガーディアン」は、英国政府が350万の抗体検査を購入したと伝えている。

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新型ウイルス感染者の洗い出しに使える抗体検査

 米国で承認された抗体検査はセレックス(Cellex)社が開発したもので、感染後数日で身体につくられる「免疫グロブリンM」(IgM)と、その後、特定の侵入者(毒性)を中和させるためにつくられる「免疫グロブリンG」(IgG)を探す。

 IgGは長期にわたる免疫の基礎となるものだ。IgM陽性はごく最近感染したことを教えてくれる。IgMとIgGがともに陽性である場合、過去1カ月以内に感染したと考えられている。IgGだけが陽性ならば、感染は1カ月以上前であったことになる。この場合、免疫を獲得している可能性が高い。他方、陰性は感染をしていないことを意味しているわけではない。IgMが検出できるのは感染後7~10日たってからになるとみられるからである。

 検査には約15分を要する。ただし、抗体があっても、それは新型コロナウイルスへの免疫を100%保証するものではない。抗体のおかげで強い免疫反応を示す人もいるが、そうでない人もいる。しかも、その免疫がどのくらいつづくかもわからない。その意味では、まだ満足できるものではないが、十分なPCR検査をしないまま実は広範囲に広まってしまっているかもしれない新型ウイルス感染者を洗い出すには大いに役に立つ。

 さらに追跡調査をすれば、免疫獲得がはっきりした人々については仕事に復帰しても問題がないことになるだろう。なおついでながら、抗体検査について詳しく知りたい人は「MIT Technology Review」 にアクセスすることをお勧めしたい。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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