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国際機関は権力闘争の場 WHOは「CHO」?

中国の覇権戦略に警戒せよ

塩原俊彦 高知大学准教授

 麻生太郎財務大臣は2020年3月26日の参院財政金融委員会で、世界保健機関(World Health Organization, WHO)のテドロス・アダノム事務局長への辞任要求がインターネット上で広がっていることに関連して、「早い話が、WHOが『ワールド・ヘルス・オーガナイゼーション』ではなく、『チャイニーズ・ヘルス・オーガナイゼーション』ではないかと、CHOに直せという声がわんわん出たことがもとだ」とのべた。

 4月7日には、ドナルド・トランプ米大統領が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのWHOの警告が遅かったと非難し、WHOへの拠出金の停止検討を明らかにした。

 二つの出来事を通じて、強く感じるのは、国際機関の官僚化であり、その官僚化が国際政治の権力闘争の場で進んでいる事実だ。国際協力が重要であることはたしかだが、その問題点を剔抉し、問題解決をはかる重要性を指摘したい。

WHOの「ていたらく」

拡大WHOのテドロス事務局長  Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

 2020年1月14日、WHOは、「中国当局によって行われた予備調査でわかったことは、人から人への中国・武漢で確認された新しいコロナウイルスの感染の明確な証拠がないということだ」と発表した。2019年12月の段階でホイッスルを吹いた李文亮医師を、逮捕までした中国当局の調査をそのまま受け入れるという愚行をWHOは犯したことになる。

 実は、WHOや国連は2002年から2003年の間で700人以上を死亡させたSARS流行に際して、感染爆発を隠そうとした中国政府を公式に非難したことがある(2003年4月13日付ニューヨークタイムス)。このとき、WHOの医師団の杭州市への訪問が認められたのは2003年4月になってからだった。国家主権を盾にして、WHOによる実情調査を拒み、隠蔽したのだ。

 本来であれば、このときの教訓をいかして、武漢へのWHO医師団の訪問を迅速に進め、その実情をWHO自らがつぶさに調査すべきであった。しかし、WHOは中国当局の力に屈し、その結果、世界中の多くの人々が死ぬことになったと言えなくもない。

 WHOの「ていたらく」はパンデミック宣言の遅れにも如実に現れている。3月11日になってようやく、「COVID-19がパンデミックと特徴づけることができるという評価に我々は至った」としたのだ。中国政府への配慮から、パンデミック宣言が遅れたとみて間違いないだろう。

 WHOの「中国寄り」の姿勢は、ほかにもはっきりと裏づけることができる。1月31日、米国政府は過去14日間に中国を訪問した外国人の入国を禁止すると表明した。これに中国政府は反発、2月27日になって、WHOは世界観光機関とともに共同声明を発表し、旅行制限は不必要であるとしたのである。この主張が間違っていたことは明らかであり、その背後に中国政府の圧力があったとみるのが「自然」だろう。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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