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死肉を喰らうハイエナにはなるまい

[182]津久井やまゆり園判決の集会、『三島由紀夫vs東大全共闘』、五輪延期……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

3月18日(水) ストレス解消と体力維持のためにプールに行って泳ぐ。空いている。だが無理をせずに流す。14時から神保町で打ち合わせ。その後、日本記者クラブで首相記者会見のオープンなあり方を求めるMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)等の記者会見に行く。上西充子法大教授も列席。そのままプレスセンターでカドカワH氏との打ち合わせ。

 植松聖被告からあした朝の接見を求める電報が来る。大阪の裁判所記者クラブで、自死した元近畿財務局職員・赤木俊夫氏の妻が佐川宣寿元財務省理財局長と国を相手取って損害賠償を求めて提訴した記者会見。自殺した赤木氏は多趣味で、坂本龍一のファンだったそうだ。

自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが残した手書きの文書自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫さんが残した手書きの文書

3月19日(木) 朝、8時半に横浜拘置支所に行くと、『創』の篠田博之編集長や森達也さんがいた。3人で接見するという段取りのようだった。死刑判決言い渡しを受けた後の接見だったが、植松被告に聞きたいことは、主文言い渡し後に挙手して何かを言おうとしていたが、あれは何を言いたかったのかということぐらいかもしれない。ただ差し入れした漫画本の感想は是非とも聞いてみたいところだった。

 ところがここでハプニングが起きた。植松被告が僕とは会えないと言ってきたようなのだ。ドタキャン。以前にも一度その経験があったので驚きはしなかったが、彼の感情の起伏はうかがいようがない。ただ接見しましょうと電報まで打ってきてドタキャンはないだろう。

 その後、赤坂に行き、いくつかの用件を済ませる。アメリカ大統領選挙の取材どころではなくなってきた様相。今の状況が続けば、大統領選挙そのものが延期される事態もあり得る。そしてその方がトランプ陣営にとっては有利に働くシナリオは容易に想像できる。ショック・ドクトリン。夕刻、西荻窪で旧知の人々と懇談。世界は狭い。

映画『三島由紀夫vs東大全共闘』は何のためにつくられたんだい?

3月20日(金) 昨夜は少々飲み過ぎたか。最近、めっきりお酒に弱くなった。

 13時30分から横浜で津久井やまゆり園の判決を考える集会に参加。RKB毎日放送の神戸金史さんも来ていた。決して広くはない会議室に50人ほどの人々が訪れてほぼ満席。僕は後ろの方の窓が開く場所に陣取った。もともと人混みが苦手だが、ウイルス禍で多少神経質になっているのかもしれない。風が入る場所がいい。

 それぞれの参加者がかなり本音を語り合っていた。裁判は何も解明しなかったと。その中で、植松被告がやまゆり園で働き始めた当時、入所者を「かわいい」と語っていたことがあるという点について、法廷で裁判長が植松被告に「小さい子ですか?」と尋ねていたという。やまゆり園が成人者施設であることすら認識できていない裁判長の質問に「その程度の認識だったのか」と不快な思いを抱いたことを話していた方がいた。

 その後、時間ができたので、映画『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』をみることにした。みないという選択肢もあったが、いずれ喧嘩を売られた時のためにみておいてもいいかと割り切った。

『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』  ©SHINCHOSHA  配給:ギャガ『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』  ©SHINCHOSHA  配給:ギャガ

 このフィルム素材には僕は個人的に長く深く関わってきた経緯がある。もう30年以上前に

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