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コロナ対策で人と人の接触「8割減少は折れてはいけない数字」は本当か?

2週間後に感染者がピークに達した後、減少に転じるというシミュレーションを検証

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

ロジックは合理的だが……

 まず「人と人との接触8割削減」の論拠と中身ですが、これだけ「公式戦術」として定着しながら、公式には、緊急事態宣言が出された4月7日に改正された「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」において、「以下の対策を進めることにより、最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す」とされて個別の対応が列挙されているだけで、詳細についてまとまった記述はありません。

 従ってその内容は西浦教授がSNSを通じて個人的に出している情報発信やマスコミ報道(参考1参考2)からうかがい知るしかないのですが、果たしてこれは妥当なものと言えるか、以下論じます。

 上記のSNSにおける情報発信やマスコミ報道における西浦教授の説明を総合すると、「人と人との8割削減」が導かれたロジックは以下の通りと考えられます。
①新型コロナウィルス感染症は、R0=2.5である。
②「人と人との接触」には「削減可」のものが75%、医療者と患者等「削減不可」のものが25%ある。
③2.5×0.75×(1-0.8)+2.5×0.25=1で、「削減可」の部分を80%削減すれば感染は収束する。

 ここで、①②③を全体としてみたロジック自体は、結局のところR0=2.5×(1-0.6)=1.0という間違い様の無い事を言っているのであり、当然ながら合理的なものといえます。

 問題は、①、②、③の個別の事項にあります。

拡大北大の西浦博教授=2020年3月30日、東京都新宿区

R0J=1.7だと「55%削減」で収束

 まず、①ですが、新型コロナウィルスは新しいウィルスであり確定的な事は言えませんが、WHOが公表しているところでは、そのR0は1.4~2.5とされており(参考)、R0=2.5は実は最も大きい(感染拡大速度が速い)推計です。

 さらに「ウィルスの性質」という意味で世界共通のR0を使うことは、純粋な計算の前提としては分かりますが、これを日本での対策の前提とした場合、例えば「日本人は欧米人にくらべて『ハグ』をしない」というような、日本社会においてはすでに社会的・文化的に削減されているものも「新たに削減するべき人と人の接触」に入ってしまうことになります。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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