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韓国総選挙、文在寅政権が圧勝/勝因は「コロナ禍の突風」だけではない

日本通の李洛淵前首相、次期大統領候補に弾み/混迷抜け出せぬ日韓関係

市川速水 朝日新聞編集委員

信任は「コロナ対策」だけではない

 結果を簡単に総括すれば、弾劾・罷免された朴槿恵(パク・クネ)前大統領の後任として朴路線をほぼ軒並み否定してきた文氏に対して、任期5年の半ばに民意が「信任」を与えたことになる。韓国内外のメディアは「総選挙の最大の争点はコロナ対策の是非」と報じてきたが、それだけではない。

 「中小企業を壊滅させた」「高等教育を受けても職がない」「外交が北朝鮮や中国寄りすぎる」といった野党や保守系言論の内政・外交政策への批判の封じ込めにも成功したことを意味し、米国や日本との冷めた関係も、まとめて是認されたともいえる。

 候補者が遊説で飛沫を飛ばさないよう口をカバーで覆う。握手の代わりに「グー・タッチ」で有権者と接触する。歌や踊り満載の集会も規模を控えめに。投票所でも人の列は間を広く空けて――。極めて異例の選挙風景だったが、そのコロナ対策に絞っていえば、文政権は支持への追い風にした。

 感染者は1万人を超えたものの、検査機器の充実や空港で歩きながらチェックを受けられる「ウオーク・スルー」など早め早めに打ち出した感染拡大防止対策が奏功したと、台湾などと並んで国際的な評価を受けた。「コロナ後」に悪化した景気をどう回復させるかについて、韓国国民は文政権に楽観的な期待を持っていることも示したといえる。

拡大国外からの入国者に新型コロナウイルス検査をするためのブース=2020年3月26日、韓国・仁川空港、東亜日報提供

 韓国では総選挙や大統領選の直前に「突風が吹く」とよくいわれる。北朝鮮がミサイルを発射して南北間に軋轢を作り出したり、内政が混乱して与野党の支持が逆転したりする。それを逆風でなく順風にした方が勝利するという図式だ。

 2004年総選挙前には、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が弾劾決議され瀬戸際に立たされたが、罷免をのがれた。「弾劾・罷免反対」の市民運動が各地で繰り広げられ、突然のように与党圧勝ムードが出来上がった。

 前回2016年総選挙では、朴槿恵大統領が党の候補公認作業に介入、距離を置く大物が公認されなかったことが明るみに出て直前に大きなダメージとなり、与党の敗北につながった。

 今回も北朝鮮は総選挙投開票の前日14日朝、日本海へ向けて短距離ミサイルとみられる物体を数発発射したが、意図がはっきりしないだけでなく(15日が金日成〈キム・イルソン〉主席の誕生日で、その祝砲ともいわれる)、コロナ対策などに腐心する韓国の関心を全く呼ばなかった。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

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