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新型コロナ総選挙に成就したセウォル号事件の教訓と「ろうそく革命」

伊東順子 フリーライター・翻訳業

 4月15日に行われた韓国の総選挙。「この時期に選挙ですか?」と日本では驚く声もあるようだが、66.2%という過去28年間で最高の投票率で無事に終わった。ニュースでも伝えられているように、与党「共に民主党」系が300議席中の180議席を獲得、過半数をはるかに超える「圧勝」という結果となった。

韓国総選挙で出口調査の結果をみる与党・李洛淵・前首相(前列左から2番目)など「共に民主党」関係者=2020年4月15日、ソウル、東亜日報提供拡大韓国総選挙で出口調査の結果をみる李洛淵・前首相(前列左から2番目)など与党・「共に民主党」関係者=2020年4月15日、ソウル、東亜日報提供

 与党勝利の最大原因は新型コロナウイルス対策の成功である。2月末に起こった大邱市での感染爆発から医療崩壊寸前という危機的状況を脱出、確定診断者(韓国では「感染者」という単語は使わない)数のカーブは下降を続け、最近は二ケタ~一ケタ台まで下がっている。世界の危機を鑑みれば、どうみても優秀である。

 「韓国は全てがナイスだよ。自分はしばらくここにいるつもり」

 たまたま仕事で韓国にいた米国人の知り合いは、自分の家があるカルフォルニアと比べても、ソウルがいかに恵まれているかを力説する。

 「だって、アメリカでは外出も自由にできないんだよ。韓国はどこに行くのも自由だ」

 ニュースでロックダウン(都市封鎖)した欧米の様子を見れば、韓国人も彼と同じように感じるだろう。さらに検査キットの不足に悩む国への輸出や海外向け支援などの報道も多い。3月25日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、その件にふれられていた。

「トランプ氏、韓国に医療用品の支援要請 コロナ感染増に対応」

 ついに韓国が米国を助ける側に回る。このことは韓国の歴史から考えれば、とても感慨深いものがある。こうなれば「現在の韓国政府は優秀なんだ」と韓国の人々が思っても不思議ではないだろう。「現在」というのは、もちろん過去の自国政府と比べてもという意味だ。

 「これが朴槿恵政権だったら、どんなことになっていたか」

 多くの人から聞いた言葉だ。人々には朴政権下でのMERS(中東呼吸器症候群)の苦い経験があるし、何よりも4月になれば否が応でも「セウォル号」の記憶が蘇る。救える命を救えなかった6年前の悲しい記憶。奇しくも選挙の翌日は4月16日、事故の6周年にあたっていた。

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

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