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5年に一度の再検討会議が延期されたNPT

発効50年、先が見通せなくなった核軍縮

塩原俊彦 高知大学准教授

 2020年1月23日、核戦争の危険を警告するために核兵器開発にかかわった米科学者らによって創出された「終末時計」は地球滅亡まで100秒と、これまでの120秒から20秒進められた(これまでの推移については図参照)。原子力科学者会報が明らかにしたもので、核戦争と気候変動の二つの要因が差し迫った地球滅亡への危機感を高めているという。

 筆者は2010年に上梓した『核なき世界論』(東洋書店)において、核兵器廃絶を実現する方法について真正面から論じたことがある。ここでは、核拡散防止条約(NPT)が1970年3月5日に発効してから50年を経過した現在の状況について、改めて検討してみたい。ただし、2020年4月27日~5月22日に予定されていた、5年に一度の国連でのNPT再検討会議は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期された。この意味についても考えてみよう。

まずはNPTの基本的理解

拡大米ニューヨークの国連本部で昨年開かれたNPT再検討会議の準備委員会=2019年5月10日

 NPTについてごく簡単に説明しておこう。1967年以前に核爆発実験を行った国を核保有国(米、ソ、英、仏、中)とし、それ以外の国への核兵器拡散を防止するねらいでつくられた。NPTは、核保有国の核兵器移譲の禁止、非核保有国の核兵器製造の禁止などを内容としている。

 締約国である非核保有国は国際原子力機関(IAEA)の保障措置(核物質が平和目的以外に転用されていないことを検証するための査察受け入れ)をとることを義務づけられる一方、核保有国は軍事交渉を推進することを約束している。なお、原子力発電については、原子力の平和利用として認める立場にたっている。

 長い歴史のなかで、NPTはいくつかのほころびをみせている。第一に、締約国でありながら条約上の義務に反して核兵器開発に着手したケースがあった。イラクや北朝鮮がその例だが、これはIAEAの査察がうまく機能していなかったことを意味している。第二に、NPTに加盟しないまま、核兵器開発に成功したインド、パキスタン、イスラエルのような国がある。これは、NPT体制の限界を如実に示している。

 NPTの欠陥を補うために5年に一度、NPT再検討会議が開催されるようになる。1995年、2000年、2010年には最終文書が採択され一定の前進をみた一方で、2005年や2015年のように、最終文書の採択に至らなかったケースもある。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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