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トランプは「忘れられた戦争」を忘れない

第5部「『炎と怒り』から『恋に落ちた』―戦略なき衝動外交」(4)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 トランプ政権1期目の外交政策における最大のレガシー(政治的遺産)は史上初めての米朝首脳会談といってよい。2017年、米朝関係は軍事衝突寸前の緊張局面にあったが、トランプ氏は2018年に急転直下、対話路線へと転換し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と3回の首脳会談を行った。しかし、トランプ氏のトップダウンによる衝動的な決断が目立ち、北朝鮮の非核化をめぐる米朝交渉は停滞を続けている。これに加え、アメリカ・ファーストで米国の利益ばかりを最重視しているため、国際社会による北朝鮮包囲網にゆらぎも出ている。トランプ氏の北朝鮮政策を検証する。

「劇的な瞬間、劇的な瞬間だ」

 「中国の習(近平)国家主席との会談を含むいくつかの重要な会談を終えた後、私は韓国に向かう。もし北朝鮮の金委員長がこれを読めば、私は彼とDMZ(非武装地帯)で会って、握手して『ハロー』と言うだろう(?)!」

 トランプ氏は2019年6月29日朝、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)出席のために訪問していた大阪でこうツイートした。閉幕後の記者会見の冒頭でも、「私は今から韓国へと向かう。我々は正恩氏と会うかもしれない。正恩氏はとても前向きだ」と語った(The White House. “Remarks by President Trump in Press Conference | Osaka, Japan.” 29 June 2019.)。

 韓国入りしたトランプ氏は翌30日、板門店へと向かう。午後3時40分過ぎ、トランプ氏は板門店の韓国側施設「自由の家」を出て軍事境界線に向かって歩き始めた。

 北朝鮮側では黒い人民服を着た正恩氏がトランプ氏を待っていた。

 「再びお会いできて嬉しいです」と正恩氏。「ここでお会いできるとは思っていませんでした」

 「劇的な瞬間だ、劇的な瞬間だ」

 トランプ氏はこう語り、正恩氏と握手を交わした。

 トランプ氏は隣の正恩氏に促される形で韓国側のコンクリート製の境界線をまたぎ、正恩氏の右腕を親しげに2回軽く叩いて歩き始めた。

 大柄のトランプ氏と恰幅の良い正恩氏は並んで20歩ほど歩き、北朝鮮側の境界線を一緒にまたいで北朝鮮国内に足を踏み入れた。2人はそこで再びがっちりと握手を交わした。

 「トランプ大統領はたったいま、境界線を歩いて越えた。我が国を訪問した初めての大統領だ。この行動は、不幸な過去をなくし、新しい未来を拓こうというトランプ氏の意思の表れだと信じている」

 トランプ氏とともに韓国側に入った正恩氏が記者団にこう強調すると、隣のトランプ氏は「G20で日本にいたときはこれを予想していなかった。境界線を越えたことは極めて光栄なことだ」と語った(The White House. “Remarks by President Trump, Chairman Kim Jong Un, and President Moon in Greeting at the Korean Demilitarized Zone.” 30 June 2019.)。

拡大初の米朝会談後、カペラホテルで行われたトランプ大統領の会見冒頭で流れたビデオに映し出されるトランプ大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=シンガポール、ランハム裕子撮影、2018年6月12日

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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