メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

米朝交渉は「失敗する運命」にあるのか

第5部「『炎と怒り』から『恋に落ちた』―戦略なき衝動外交」(5)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

「正恩氏は自分自身と核兵器以外は誰も信用していない」

 元米中央情報局(CIA)上席分析官で、北朝鮮の大量破壊兵器や金正恩政権の内政外交戦略を専門とするジュン・パク米ブルッキングス研究所上級研究員は「我々が警戒するべきは、正恩氏の目標は核兵器の放棄ではないことだ」と警告する(ジュン・パク氏へのインタビュー取材。2018年9月11日)。

拡大インタビューに応じる米ブルッキングス研究所上級研究員のジュン・パク氏=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年9月11日

 「金一族は長年のパラノイア(妄想症)と恐怖により、韓国や米国に対してのみならず、軍事支援などを打ち切って経済制裁に同調した中国やロシアも信用していない。正恩氏は自分自身と核兵器を除き、だれも信用しておらず、核開発を続けるだろう」

 北朝鮮はハノイサミットが物別れに終わると、弾道ミサイルの発射を再開した。北朝鮮は2019年5月以降、11月までに13回にわたって短距離弾道ミサイルや多連装ロケットを発射した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は、飛距離を問わず、すべて明確な国連安保理決議違反にあたる。

 ところがトランプ氏は「彼(正恩氏)はミサイル実験が好きだ。我々は短距離ミサイルを制限していない(The White House. “Remarks by President Trump Before Marine One Departure.” 23 August 2019.)」と発言。正恩氏が自分に約束した「ICBMを発射しない」という約束を破らない限り、北朝鮮の弾道ミサイル発射を容認する姿勢を示し続けている。

 トランプ氏の方針を受け、米政権高官が北朝鮮の弾道ミサイル発射のたびに報道機関の問い合わせに対して出す声明は「報道は承知している。我々は引き続き状況を注視しており、同盟国と緊密に協議をしている」という紋切り型の表現であり、米国が国連安保理決議違反にあたる北朝鮮の弾道ミサイル発射を批判することはなくなった。

 米政府当局者は「北朝鮮は今後もトランプ氏と約束したICBM発射と核実験を除き、短距離・中距離弾道ミサイルの発射を続けるだろう。日本列島越えの弾道ミサイルを再び発射する可能性もあるだろう」と語る。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

園田耕司の記事

もっと見る