メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

日本国籍の私は韓国で排除され、在日2世の母に近づけた気がした

コロナ対策に立ちはだかる「国籍」。「芸術」への理解。日本も韓国もまだまだだ

藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授

 『日韓境界人のつぶやき』として、コロナ生活に関しては、今回が第4弾となる。

 日本も韓国も「コロナ19事態」では、社会的・経済的格差や、医療機関の脆弱な部分など、色んなものが露呈してきている。何事も「国家」「国籍」を前提に決められてしまうと、「またか…」とうなだれてしまう。国家がある限り、国籍は絶対的で根底的な決定条件になってしまい、それゆえ、即、外国籍の者は除外される。

 ――当たり前だよ。外国籍なんだから。自分の国に守ってもらえば? 

 と言う人もいるだろう。

 ――じゃあ、そのあなたが持っている国籍は自分が選んで、または、自分の力で勝ち取ったものですか? 偶然その国に生まれたからじゃないの? 

 と、言いたい。

 だから、出自(出身)で差別することは不平等なのだ。運も実力のうちというが、出自(出身)に関しては問題をはき違えている。

 前回『安倍官邸と大違い! 韓国大統領府ホームページの驚異の「民主化」力』に引き続き、「コロナ19事態」における韓国の「災難支援金」について書く。

4月15日の総選挙の投票所。事前投票率歴代最高値である27%、最終的な暫定投票率66%。結果「ともに民主党」をはじめとする与党が190席で過半数を上回った

在日2世の母の胸中

 外国人を含めるかどうかの対象者に関する文言は一転二転した。初めは「韓国籍に限る」と発表され、その後「内国人に限り」という言葉に変わった。

 しかし、詳細が公式に発表された時、結局、居住外国人は「内国人」の範疇に入らなかった。日本国籍の私は、やっぱり除外された。腹が立った。

 私は、日本でも支援金は貰えない。長期海外滞在を見越しているので、日本の住民表は抜いて来ている。

 だいたい「内国人」という言葉自体、無神経で無知識だ! と一瞬頭によぎるものの、「内国人」という言葉は、韓国「内」に住んでいる者という事か? と一抹の希望を私に抱かせた。馬の鼻先に垂らされたニンジンのようだった。

 しかし、それが裏切られたお陰で、昔、色々排除されたことなども思い出され、複雑だった(『日韓境界人が見たコロナ対策「日韓格差」』参照)

 自分のアイデンティティについて、韓国人か? 日本人か? 「在日」か? の民族的カテゴリーによって、他人から振り回されることはもう慣れっこだが、今回、大きく違う事は、国籍でばっさり切り捨てられたことだった(『日本人よ、韓国人よ、在日コリアンよ、私は私だ!』参照)。

 振り返ると、私の在日2世の母も、親戚のほとんども、常に制度的排除を経験してきた。幼いころから、悔しい体験や不条理だと感じている母の気持ちは痛いほどよく分かり、一心同体のように思っていたが、日本国籍の私と韓国籍の母には、絶対的な権利の違いがあった。だから、大好きな母と一緒になりたくて「韓国籍にかえる!」と言って母の表情を曇らせたこともあった。

 今回、ヘンな話だが、国籍で排除されたことによって、少し、母に近づけた気がした。こういう思いの積み重ねを在日はして来たんだと。

An Ming/Shutterstock.com

ひとりではないと思える環境。そんな隣人のいる環境

 正直、周りは当たり前のように貰っていて、自分は貰えないというのは、シンプルに悲しい。同じように税金を払っているという自負もあるし、韓国人の仲良しもいる中で、自分だけが不利な立場であるという事を声に出して言いづらい。孤独感、憂鬱な感じ……このまま支援金がもらえないのはマズイ!という現実的な問題も重なり、いろんなことが頭をグルグル駆け巡った。

 社会的弱者とはこういう事なのだ。だが、せめてもの声を上げられたのが、青瓦台への請願クリックと京畿道への請願クリックであった。(『安倍官邸と大違い! 韓国大統領府ホームページの驚異の「民主化」力』参照)

 実は、この請願のサイトを教えてくれたのは、韓国に住む日本人の知り合いだ。

・・・ログインして読む
(残り:約1826文字/本文:約3471文字)