分断を煽るスローガン「JAPANESE ONLY」が公然と掲げられ……
2020年04月29日
私が真っ先に思い浮かべたのは、2014年3月のJ1リーグ、浦和レッズの試合でした。
試合が行われた埼玉スタジアム2002の浦和レッズのサポーター側に、「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられことが問題視され、チームに1試合、無観客試合という処分が下ったのです。国籍や出自に対する差別には、毅然とした態度で臨まなければならないのだ。という投げかけだったのではないかと思います。
ところが最近、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、街中の飲食店に、あれだけ問題視された「JAPANESE ONLY」という言葉が公然と掲げられているのを目にするようになりました。
当然のことながら、日本には様々なルーツの人々が暮らしています。感染防止の観点から見ても、「JAPANESE ONLY」にまったく合理性はありません。
それにもかかわらず、「非常時なんだから当然だ」と擁護する声が飛び交っています。この言葉が、ある種の正当性を持っているかのように、ネット上だけではなく、街中にも堂々と表れはじめているのです。
こうした異様な空気感は、市民生活の中だけにとどまりません。新型コロナをめぐる緊急経済対策の最大の柱である現金一律給付の議論の中でも、「給付は日本国籍者に限るべき」という声が複数の議員からあがりました。
日本はこれまで、“人手不足”解消のため、入管法を改正し、外国人労働者の労働環境や人権への配慮か不十分なまま、受け入れだけを拡大してきました。そんな彼らも今、自粛要請の最中にいます。コロナの感染が広がる非常時なので「自己責任」でなんとかしろと、切り捨ててすむ問題ではありません。
例えば在留資格がない人々の中にも、日本に配偶者がいたり、その家族が病気がちで継続的なケアが必要だったり、子どもがいたり、そして命の危険を逃れるため難民申請をしていたりと、帰れない事情を抱えている場合があります。そんな彼らを待ち受けているのは、国連から再三、「拷問にあたる」と警告されている上限のない入管施設での収容か、公的支援にほぼつながることができない「仮放免」という立場での生活です。この「仮放免」については後述します。
「不法残留は不法残留だ」と決めつけられ、彼らがなぜ帰れないのか、耳を傾ける機会は限られてきました(参考)。コロナの感染拡大を受け、そもそも帰る便もなく、むしろ「移動をしないように」と再三要請が出されている最中であっても、です。
仮に様々なバックグラウンドを持つ人々が、給付の対象から外れてしまったとしたら、何が起こるでしょうか? 彼らは生活をつなぐために、時に感染リスクの高い場所で働かざるをえなくなるでしょう。
他国はどうでしょうか。
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