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韓国総選挙、与党が大勝したけれど

異例づくしの選挙に、次期大統領選へ激動の2年間の幕開け

箱田哲也 朝日新聞論説委員

 4年に一度の韓国総選挙は4月15日、新型コロナウイルス対策として政府が外出自粛を呼びかける中で投票日を迎えた。厳戒態勢下だったことのみならず、選挙制度から投票率、与党の歴史的勝利という結果にいたるまで異例ずくめの選挙だった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は巨大与党の誕生を背景に国政運営にあたるが、政界の注目は早くも次期大統領選に向かう。韓国政界は今後、再編を含めた波乱含みの展開となりそうだ。

コロナへの対応が支持され、与党圧勝

拡大2020年4月15日投開票の韓国総選挙で当選した与党「共に民主党」の李洛淵・前首相=東亜日報提供

 新型肺炎のため、韓国に行けても自由に取材できない。しかたなく、電話や対話アプリを使って取材すると、与党当選者の1人は語った。

 「新型コロナウイルスに対する政府の対応が正しかったことが証明された。有権者がそれを行動で示してくれた」

 政府が外出の自粛を求める中でも予定通りに総選挙が実施されたのは、与野党ともに4月中旬の投票は自党に有利になると踏んだため。だが結果は与党「共に民主党」が定数300のちょうど6割にあたる180議席を得る歴史的圧勝となった。

 曺国(チョ・グク)・前法相をめぐる事件や経済低迷など、与党にとって決して分の良い選挙とは言えなかった。最大野党「未来統合党」の関係者たちは早い段階から、政府・与党を攻撃する材料には事欠かないと息巻いていた。

 そこにふりかかったウイルス禍。中国への弱腰姿勢や歯止めがかからぬ感染者増に批判が集まり、文在寅大統領の弾劾(だんがい)を求める大統領府への請願には140万人以上が賛同した。政府・与党内には、このまま状況が悪化すれば、市民に引きずり下ろされた朴槿恵(パク・クネ)・前大統領の二の舞いになりかねないとの危ぶむ声も出ていた。

 それでも与党は、感染者増の勢いがまだ収まらぬ3月初め、新型コロナウイルス国難克服委員会を発足。この問題の解消を前面に掲げて選挙戦にのぞむことを決めた。

 5年前に中東呼吸器症候群(MERS)の流行で多くの犠牲者を出した苦い教訓を踏まえ、政治の判断よりも専門家の意見を尊重すること▽対応の速度あげること▽情報の透明性を高めること――などを徹底することで投開票日までには状況改善すると自信を深めた。

 なかでも感染の有無を調べるPCR検査と隔離の徹底には力を入れた。検査数をしぼった日本では、感染者数がどんどん増えている韓国の状況を冷ややかにみる向きがあった。しかし、韓国では逆に、希望者があまねく検査できる態勢を早期に整えたことで、必要以上の不安を社会に与えずにすんだと評価されている。

 投票日前には1日あたりの新規感染者が2ケタに抑えられた。政府は、韓国モデルが高い評価を受けていると声高に唱え、文政権の支持率も上昇。検温やマスク着用、消毒といった面倒な投票となったにもかかわらず、投票率が28年ぶりの高水準となったことも与党に有利に働いた。

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筆者

箱田哲也

箱田哲也(はこだ・てつや) 朝日新聞論説委員

1988年4月、朝日新聞入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、97年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、94年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。99年からと2008年からの2度にわたり、計10年、ソウルで特派員生活をおくった。13年4月より現職。

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