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新型コロナがあぶり出した民主主義と権威主義の競争

言論の自由はウイルスの伝染を防ぐ社会の「免疫力」を強める

吉岡桂子 朝日新聞編集委員

正常なことをした人が「英雄」になってしまう

――反響はどうでしたか。

 共感の声が寄せられました。また、新型コロナのまん延は「言論の自由の圧殺が招いた人災だ」と李克強首相らに訴える公開書簡が知識人有志によって作成されるなか、私の意見も取り込まれました。言論の弾圧につながる法律の改正も求めました。数多くの賛同の署名がありました。

――こうした活動を当局は問題視しませんでしたか。

 私は言論自由の日を呼びかけましたが、(公開書簡の)組織者ではありませんから、大きな問題にはなっていません。大学の管理部門が、あれを言うなこれをするなというのはいつものことです。彼らにとっては、それが仕事です。

――李医師が亡くなったあと、国家監察委員会は李さんに対する訓戒処分を「不当」とし、公安当局も処分を撤回して謝罪を表明しました。

 庶民の怒りを鎮めるためですよ。私は李さんが飛び抜けてすごいことをしたとは思っていないんです。医師として人々の命にかかわる事実を知っているのに黙っていたら、それこそ職業倫理において失格でしょう。

 彼自身もきっと、自分がすごいことをしたとは思っていないはずです。医者として人として普通のことをしたつもりだったと思います。問題は、中国では国家の倫理が低すぎて、それと異なる正常な判断をした人が「英雄」になってしまうことです。

拡大李文亮さんが亡くなった7日、北京市内の河川敷の雪上には「さようなら李文亮」との文字が書かれていた=2020年2月7日、北京市、平井良和撮影

なにが起きたのか、わからない中国

――中国政府は3月、米国主要3紙の記者3人を国外退去処分にしました。

 中国メディアの在米特派員の人数を制限された対抗措置でもあるかもしれないが、基本的には事実の追求が邪魔なんです。中国メディアに対してはもっとひどい管理をしていることは言うまでもありません。

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筆者

吉岡桂子

吉岡桂子(よしおか・けいこ) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。1989年に朝日新聞に入社。上海、北京特派員などを経て、2017年6月からアジア総局(バンコク)駐在。毎週木曜日朝刊のザ・コラムの筆者の一人。中国や日中関係について、様々な視座からウォッチ。現場や対話を大事に、ときに道草もしながら、テーマを追いかけます。鉄道を筆頭に、乗り物が好き。バンコクに赴任する際も、北京~ハノイは鉄路で行きました。近著に『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』(https://www.amazon.co.jp/dp/4093897719)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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