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日本が米国の対中核戦略に注文 密室協議で「核の傘」にすがる実態あらわに

核を組み込む「日米同盟の抑止力」を強化 唯一の被爆国の重みどこへ

藤田直央 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

拡大情報公開法による筆者の文書開示請求に対し、外務省が2018年にごく一部を明かした日米拡大抑止協議(EDD)の「極秘」文書

 中国の核戦力が強くなったと認めないでほしい――。日本政府が近年、そんな要請を米政府にしてきたことがわかった。米国が日本に差しかける「核の傘」がしぼんでしまうという不安からだ。日本は唯一の戦争被爆国として核廃絶を唱えながら、核に頼って米国にそこまでの注文をつける国になっている。

日米拡大防止協議の文書で明かされたこと

 日米でそんな突っ込んだやり取りをしてきたのは、2010年に始まった日米拡大抑止協議という非公開の場だ。英語ではEDD=Extended Deterrence Dialogue。核問題に関わる両政府の外務・防衛当局幹部が年に1~2回集まっている。

 中国や北朝鮮の直近の動向をふまえ議論を重ねているようだが、内容は極秘。これまでの会議に関する筆者の情報公開請求に対しても、外務省はほぼ墨塗りの文書しか出さない。ただ、EDDについて2018年に日米安全保障条約課が作った文書で、こんな説明が明かされていた。

 ①我が国の安全保障を確保するために不可欠な米国の拡大抑止、特に核抑止へのコミットメントを確認し、その信頼性・実効性の確保を図るとともに、②日米同盟による総合的な抑止力・対処力の強化に向けた議論等を行うことを目的とする(丸数字は筆者)

 ②は「日米同盟の抑止力」という最近のキーワードなのだが、それは後で触れるとして、まず①だ。「米国の拡大抑止」とは、米国がいざとなれば核を使ってでも同盟国の日本を守る姿勢を示し、日本を脅かす国を牽制することだ。

 日本は半世紀前に佐藤栄作首相が表明した非核三原則を「国是」(安倍晋三首相)とし、核を持たないことにしている。その日本に米国が差しかける「核の傘」である。

 複数の日本政府関係者によると、日本側は「核の傘」が揺らがないようにEDDの発足以来、米国側にこんな表現で、増強が進む中国の核への対応を求めてきた。

 「中国の核戦力に対し、米国は戦略的脆弱性を認めないでほしい」

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筆者

藤田直央

藤田直央(ふじた・なおたか) 朝日新聞編集委員(日本政治、外交、安全保障)

1972年生まれ。京都大学法学部卒。朝日新聞で主に政治部に所属。米ハーバード大学客員研究員、那覇総局員、外交・防衛担当キャップなどを経て2019年から現職。著書に北朝鮮問題での『エスカレーション』(岩波書店)

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