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コロナで“ロックダウン”に効果。経済活動との両立を図り始めたマレーシア

モスクでの集団感染者を国をあげて徹底追跡。新規感染者を抑え込み次のステージへ

海野麻実 記者、映像ディレクター

pixelplusdesign/shutterstock.com

 今、にわかに”ロックダウン”の効果を示しつつある国がある。日本企業も多く進出し、日本人観光客にも人気の高い、東南アジアの常夏の国マレーシアだ。

 3月18日にアジア初の「事実上の国境封鎖」と学校や企業、商店などもすべて閉鎖される「活動制限」を断行したマレーシア。当初は日本より感染者数、死亡者数ともに大幅に少なく、3月前半までは目立った感染者数の伸びも確認されていなかった。

 しかし、3月15日に前日の35人から190人と1日当たりの新規感染者数が急増して以降、連日100人超、多いときは200人を超える新規感染者数を記録。東南アジアでも一時最多の状態が続いた。

感染爆発の引き金を引いたモスクでの大規模礼拝

 爆発的な感染者増加の背景にあったのは、イスラム教の礼拝所「モスクでの大規模礼拝」だ。マレーシアの首都クアラルンプール近郊にあるモスクで、2月27日から4日間に渡って、イスラム教団体「ジャマアト・タブリーグ」が開催した大規模礼拝が、“集団クラスター(感染集団)”となり、爆発的な感染者数の引き金となった。

 世界各国から約1万6000人が参加したとされるこの集会では、大きなテントで皆が寝泊まりし、食事などを同じ皿などでシェア。モスク内でも、肩を寄せ合う距離で見知らぬ者同士の握手などが頻繁に交わされていたという。文字通り「密閉」した空間に多くの人たちが「密集」していた状況だ。

 一時は、マレーシア国内の感染者数の実に6割以上が、このモスクで開かれた大規模礼拝を感染源する深刻な事態となっていた。

集団感染の引き金となったモスクで行われた大規模集団礼拝で、参加者たちが寝泊まりしていたテント。4日間寝食を共にしていた(モスク集団礼拝参加者から提供)

“ロックダウン”、モスクでの行事中止を断行

 しかし、この事態を重く見たマレーシア政府の動きは実に早かった。

 この集団礼拝などを感染源とする急速な患者数の伸びが確認された3月15日から一夜明けた16日、高齢のマハティール前首相に変わって、就任したばかりであったムヒディン首相が夜10時に緊急会見を開き、事実上の国境封鎖と活動制限令(一部を除く原則的なロックダウン)開始を宣言。わずか2日後の18日からの施行を決断した。

 ムヒディン首相は、「パニックや不安に陥らず、落ち着いていただきたい。我々は、中国などの国々が思い切った対策を取り、感染を急速に減少させた事例を目にしてきている」と訴え、あらゆる活動が突然制限されるという措置への理解を国民に強く求めた。

 さらに、モスクでの礼拝が集団クラスターとなった事態を重く見て、イスラム教を国教とする国家でありながら、いち早く大胆な対策に打っても出た。

 6割以上がイスラム教徒であるマレーシアでは、祈りへの「アザーン」が街中に鳴り響き、1日5回の礼拝は欠かせないが、モスク内は信者が狭い空間に密集して一定時間滞在し、接触頻度も増える。そのため、金曜礼拝を含むモスクでの全宗教行事が中止されることとなった。

モスクでの“集団クラスター”追跡調査に本腰

 集団クラスターを発生させた大規模礼拝の参加者への追跡調査は困難を極めた。礼拝に参加したとされるマレーシア人の信者約1万4500人は、各地方へと散り散りに帰郷しているうえ、家族や近隣の人々が濃厚接触者となり、感染の拡大に拍車をかけた。マレーシア国内で確認された初の死者である34歳の男性も、このモスクでの礼拝参加者で、持病などは確認されなかったことから、緊迫感は一気に増した。

 さらに、この集団礼拝には海外からの参加者も多く、ブルネイやカンボジア、シンガポール、タイなど25カ国から1500人とされる参加者が既に帰国しており、その後、各国での感染者やその死亡事例などが次々と報告される事態となった。

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