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「9月入学」は実現可能だ!~問題点と対処法

根本的な改革は平時には進展しない。コロナ危機を機に停滞してきた議論を動かせ

登 誠一郎 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

2.学業の遅れ取戻しと9月入学との関係

 9月入学制度とは、来年以降の入学と進学の時期を9月とし、卒業と学年の終業を3月から6または7月に伸ばすことである。

 まず第一に挙げられる問題点は、「学業の遅れは学年が終了する来年3月までに取り戻す必要があるので、来年9月への入学時期の移行は、これに役立たない」という議論である。

 小中学校の学習指導要領は、年間35週(1015時間)を教科指導に当てるとされている。7月から来年3月までに使える日数は、運動会などの必要な学校行事、準備期間を除くと27週程度と想定されるので、この期間内に必要な教科指導を行うためには、通常の1.3倍のスピードアップをしなくてはならないとの議論である。

 このために考えられている方策は、ICTの活用、授業の仕方のスピードアップ、夏休みの一部返上、土曜授業などであるが、この実施にはかなりの無理があり、子供の体力に悪影響を与えたり、学力の一層の格差拡大を招いたりしかねない。

 さらに、感染症の専門家が予想している通り、もし秋以降にコロナ感染の第2波、第3波が来ると、学習日程はますます窮屈になる。こういう状況で、卒業、終業を7月にすることは、約4か月間の時間の余裕が生じるので、子供たちの学業に過度の負担を与えることなく、必要な学習指導ができることになる。

3.入学者の急増にどう対応するか

 昨年の小学校入学者数は約100万人である。今年の入学者は2013年の4月から14年の3月末までに生まれた子供で、その数は多少減少すると予測されている。

拡大hanapon1002/Shutterstock.com

 もし来年に9月入学制度が実施されると、このままでは、該当期間が5か月間増加することになるので、新一年生は2014年の4月から15年の8月末までに生まれた子供となり、その数は、一挙に40万人ぐらい増加することとなる。

 これでは、教室、教員などの現場は全く対応できなくなる。

 これを解決するためには、5年間かけて、新入生該当者の生まれ月を1ヶ月ずつ遅らせて、各年13ヶ月を対象期間とする方法が取りうると考える。これによると毎年の入学者数は約108万人となり、教育現場への負担も最小限に抑えられると判断される。

 具体的には、新制度初年度の2021年(来年)9月に小学校に入学する生徒は、2014年の4月から翌年の4月までの13ヵ月間の生まれとし、以降は、基準の生まれ月を毎年1ヶ月遅らせて13ヶ月ずつスライドさせる。そうすると5年目の2025年9月の入学者は、2018年の8月から翌年の8月までに生まれた生徒となり、ようやく8月末までに生まれた生徒が9月1日に入学できるというキリの良い形となる。

 なお幼稚園と保育園についても同様に新入園児童の生まれ月を調整する必要がある。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 社団法人 安保政策研究会理事、元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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