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コロナ危機でも東京都知事選の延期論が出てこないわけ

緊急事態宣言が延長。2カ月後に迫る都知事選を予定通りおこなっていいのか

大濱﨑卓真 選挙コンサルタント

 新型コロナウイルス感染症が、国内でも猛威を振るい続けています。戒厳令とも言うべき緊急事態宣言は、さらに1カ月延長され、これまで経験のないような緊張がまだまだ続きます。

 そんななか、東京都民の多くが外出をせざるを得ない「一大イベント」が刻一刻と迫っています。東京都知事選挙(6月18日告示、7月5日投開票)です。同じく4年に1回のイベントであるオリンピックは延期されました。都知事選挙はどうなのか。なぜ誰も延期を言い出せないのか。考えてみたいと思います。

fpdress/shutterstock.com

「選挙は不要不急の外出にはあたらない」

 問題の本質に切り込む前に、そもそも選挙は「不要不急」にあたるかどうかを考えたいと思います。

 安倍晋三首相は4月7日の参議院議院運営委員会で、「選挙は民主主義の根幹をなすもので、不要不急の外出にはあたらない」と述べ、緊急事態宣言発令の状況においても執行する方針に変わりないことを示しました。さらに4月17日に行われた記者会見で、フリーランスの畠山理仁氏が郵便投票の拡充やインターネット投票の検討、選挙の延期の検討について問うたところ、「感染リスクを避けながら実行」しており、「基本中の基本であるこの選挙は、できる限り実施していくこととしたい」と述べています。

 実際、緊急事態宣言が発出された4月、感染拡大が進む東京都においても人口約28万の目黒区において目黒区長選挙が執行されたほか、衆議院静岡4区では補欠選挙とはいえ国政選挙が行われました。これまでのところ、新型コロナを理由とした選挙の延期や中止は起きていません。

「3密」作業が多い選挙運動

 次に、選挙や投開票は、感染拡大防止のために今避けるべきだとされる密閉、密集、密接のいわゆる「3密」にあたるかどうか、考えてみます。

 まず、候補者がおこなう選挙運動についてですが、新型コロナウイルスの感染が広がり、予防が叫ばれるようになってから、各地の選挙では演説会や決起大会といった集会は行われない傾向になったほか、屋外での選挙運動も自粛傾向にあります。

 たとえば、3月の熊本県知事選挙では、当選した蒲島郁夫知事はほとんど選挙運動をせず、当選の万歳三唱も夜遅くにもかかわらず事務所の外でおこなわれ、パイプ椅子が相応の距離を保って配置されるなどの、細かい感染防止の対応がとられました。

 とはいえ、選挙の膨大な事務作業のひとつであるビラにシールを貼る作業、通称「証紙貼り」は、分量や作業の性質上、密閉した部屋で人が密集しておこなわれますし、電話で投票を依頼する「電話作戦」も、選挙事務所の一角に置いた固定電話を使う従来の形で実施しようとすると、おのずと「3密」になりがちです。選挙カーに運動員が乗り込んでおこなう連呼や街頭演説でも、「3密」が生じることは容易に想像できます。

投票、開票作業に関して総務省の通知も

 選挙管理委員会がおこなう投開票実務はどうでしょう

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