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コロナ危機でいよいよ露呈した安倍政権の「検証力」の欠如

状況を分析して効果を検証し新たな施策に役立てる。そんな政治の力量が問われるが……

星浩 政治ジャーナリスト

首相のかけ声と行政との間に生じた乖離

 背景には、厚労省がPCR検査の拡大に慎重だったことがある。「PCR検査を大幅に増やせば、陽性患者が増えて病院に収容しなければならないが、現実には病院に受け入れる余裕はない。そのため、PCR検査を抑える必要があった」と厚労相経験者は語る。医療崩壊を防ぐためにはPCR検査を抑えるしかないという本音である。

 安倍首相の掛け声と実際の行政との乖離(かいり)が生じていた。本来なら、この段階でクラスター対策からPCR方策への転換を明確に表明し、厚労省にも指示してPCR検査拡大に大きく舵を切るべきだったのだが、それができなかった。

 すなわち、クラスター対策から転換し、感染者は隔離する。人々の外出自粛によって接触機会を減らすことで、感染拡大の動きを抑え込む。いわゆる「自粛と隔離」政策だが、そのためにも感染者を割り出すPCR検査の拡充が不可欠となる。クラスター対策の限界を検証し、自粛と隔離政策を推進するのである。だが、安倍首相の口からは、政策の検証も戦略の全体像も説明されることはなかった。

不信感を招いたPCR検査の拡大停滞

 安倍首相は4月6日、緊急事態宣言を出すにあたっての記者会見で、PCR検査について「1日2万件に倍増する」と表明。8000件程度だった検査を大きく増やす方針を明らかにした。それでも毎日の件数は9000件ほどにしか増えていない。首相が号令をかけた「2万件」が実現しないことは、政権への不信感にもつながっている。

 ちなみに、OECD(経済協力開発機構)は4月末に加盟36カ国のPCR検査数を発表した。それによると、1000人当たりの検査数で日本は1.8人でビリから2番目の35位。

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筆者

星浩

星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト

1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。

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