金正恩委員長「重体説」、その背景と影響を専門家が読み解く(上)
2020年05月07日
4月中旬以降、いろんな情報と報道が入り乱れた。5月に入ってまもなく、本人の動静が報じられ、事態は収束しつつある。久しぶりに現れた金正恩氏の映像を見る限り、とても重篤とは思えない。誤報の数々を見ると、事実でない情報や分析を提供したのは、日米韓などの「政府関係者」や北朝鮮「関係筋」たちのようだ。とすれば、その関係者や関係筋は、実は北朝鮮に精通していないのか、あるいは、みんなに虚言癖があるのか。
内部が見えにくい北朝鮮に関する報道には誤報がつきもの、とはいえ、なぜこんなことが起きるのか。日本政府内で長年にわたり北朝鮮情報に触れ、分析を続けてきた元公安調査庁第2部長の坂井隆さんに聞いた。
さかい・たかし 1951年生まれ。公安調査庁で長年、北朝鮮分析にあたり2012年に退官。共著に『独裁国家・北朝鮮の実像』(2017年、朝日新聞出版)など。
――一連の騒動を終始冷ややかにご覧になっているようでしたが。
ちょっと騒ぎすぎとの印象を受けていました。
最初のきっかけは、4月15日、祖父の金日成(キム・イルソン)の誕生日の参拝行事に金正恩委員長の出席が報じられなかったことです。確かにこれは異例なことで、その理由や背景は注目するに値しました。これはもしかすると、何かが起きているのではないか、と考える人たちがいて、そういう「ニーズ」に即して「金正恩重体」説が投げ込まれた。だからそれだけに注目を集めたのでしょう。
結果として、「一犬影に吠(ほ)ゆれば百犬声に吠ゆ」という言葉通りの状況が生まれました。ただ、北朝鮮に関しては、これまでも似たような騒ぎがあり、既視感のある出来事とも言えます。
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