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貿易戦争に執心、安全保障に無頓着なトランプの対中観

第6部「トゥキディデスの罠―経済ナショナリストに率いられた大国間競争」(2)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

 経済的・軍事的な台頭著しい中国に対抗し、ニクソン訪中以来の「関与政策」を終結させ、「競争政策」を始めたトランプ政権。その対中政策は、経済ナショナリストとして中国に貿易戦争を仕掛けるトランプ大統領個人の意思と、中国を抑え込もうと大国間競争を仕掛ける米国としての国家意思から成り立つ。米中両大国の深まる対立は「新冷戦」と呼ばれ、強い結びつきがあったはずの米中経済には分離(デカップリング)の様相も見せ始める。世界を不安定に陥れる米中対立の今を検証する。

「新冷戦」を印象づけたペンス演説

 トランプ政権の対中強硬路線は、北朝鮮政策とは異なり、政権トップのトランプ大統領のリーダーシップだけに基づいているものではない。米政府という国家としての確固たる意思をもった一貫性した政策といえる。

 トランプ政権の対中強硬姿勢を国内外に決定的に印象づけたのが、2018年10月4日に保守系シンクタンク・ハドソン研究所で行われたペンス副大統領の演説である(The White House. “Remarks by Vice President Pence on the Administration’s Policy Toward China” 4 October 2018.)。

拡大ワシントン市内で講演するペンス副大統領=ワシントン、ランハム裕子撮影、2018年2月14日

 トランプ政権は、ペンス演説を政権としての対中政策と位置づけている。ペンス演説を要約すれば以下の通りである。

● 前政権(胡錦濤政権)には、中国で経済的、政治的自由が広まるという希望があった。しかし、その希望は叶えられずについえてしまった。
● 中国共産党は、不公平な貿易、為替操作、強制的な技術移転、知的財産の侵害を行っている。最悪なのが、中国の治安当局が米国の最新の軍事計画を含む科学技術を盗用する首謀者であるという点である。
● 中国は米国を西太平洋から追い出そうとしている。中国艦船は尖閣諸島周辺をパトロールし、南シナ海の人工島では軍事拠点化を進めている。中国軍艦船は9月末、南シナ海で米駆逐艦から45ヤード以内の距離まで接近させるという向こう見ずな嫌がらせをした。
● 中国は国内でキリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒を弾圧している。中国・新疆ウイグル自治区では、100万人のウイグル族を収容所に入れ、24時間体制で洗脳している。
● 中国はアジア、アフリカ、欧州、南米諸国に対し、巨額のインフラを提供する代わりに対中債務を負わせる「借金漬け外交」を展開し、影響力の拡大を図っている。
● 中国は米中間選挙に影響力を行使しようとしており、中国が米国の民主主義に干渉しているのは疑いようがない。中国の宣伝工作活動は、米国の企業、映画業界、シンクタンク、学識経験者、ジャーナリスト、公的機関職員に対して行われている。

 ペンス演説の特徴は、米国にとっての中国の経済的、軍事的な脅威はもとより、中国国内の人権弾圧、途上国などに対する中国の対外戦略、米国内での宣伝工作活動など幅広い分野の問題を包括的に指摘しているという点にある。

 経済ナショナリストとして基本的には中国との経済問題に関心を集中させているトランプ氏に比べ、ペンス氏の演説の方が米国のより強硬な姿勢をあらわしているということができる。

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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