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貿易戦争に執心、安全保障に無頓着なトランプの対中観

第6部「トゥキディデスの罠―経済ナショナリストに率いられた大国間競争」(2)

園田耕司 朝日新聞ワシントン特派員

中国による米国内の選挙への干渉?

 ペンス演説後、ワシントンの外交・安保専門家の間では「新冷戦」という言葉が警戒心をもって語られるようになった。

 実は、ペンス演説には伏線がある。

 1週間ほど前の9月26日、トランプ大統領は国連安全保障理事会の会合で、「中国が11月の米中間選挙に干渉しようとしている」と批判。中国による選挙干渉の目的について「彼らは我々に勝利して欲しくない。なぜなら私が通商問題で中国と対決する初の大統領で、通商問題で勝利しつつあるからだ」と語った。(The White House. “Remarks by President Trump at the United Nations Security Council Briefing on Counterproliferation | New York, NY.” 26 September 2018.

 会合後には、中国国営の英字紙チャイナ・デイリーの系列紙が米中の貿易戦争の影響で中国が農産品の輸入先を他国に切り替えることで、米国の生産者が損害を被るなどと伝える記事の写真をツイート。「中国は宣伝をニュースに見えるよう(農家が多いアイオワ州の)米紙デモイン・レジスターやほかの新聞に挟み込んでいる」と批判した。

 ただし、トランプ氏の主張した中国による選挙干渉は、ロシアによる2016年大統領選への選挙干渉と異なり、あまりにも抽象的な内容だったため、その後の記者会見では「何の証拠があるのか」と逆に記者団から突っ込まれる事態となった。

 ペンス演説はこうしたトランプ氏の演説に対する批判への反論という意味合いもあったとみられる。

 中国外交・安全保障問題の専門家である米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイサー上級顧問は、ペンス演説の内容について「政権としての対中政策の『青写真』を示したとは思わない。中国に関するあらゆる問題が網羅されていると思うが、解決策にはあまり言及されていない」という厳しい評価をしている。国連安保理におけるトランプ演説への批判を受け、政府内の各部署のもつ中国関連の問題を集め、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)がそれらをつなぎ合わせて発表したものだろう、という見方を示した(ボニー・グレイサー氏へのインタビュー取材。2019年4月29日)。

拡大インタビューに応じる米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイサー上級顧問=ワシントン、ランハム裕子撮影、2019年4月29日

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筆者

園田耕司

園田耕司(そのだ・こうじ) 朝日新聞ワシントン特派員

1976年、宮崎県生まれ。2000年、早稲田大学第一文学部卒、朝日新聞入社。福井、長野総局、西部本社報道センターを経て、2007年、政治部。総理番、平河ク・大島理森国対委員長番、与党ク・輿石東参院会長番、防衛省、外務省を担当。2015年、ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員。2016年、政治部国会キャップとして日本の新聞メディアとして初めて「ファクトチェック」を導入。2018年、アメリカ総局。共著に「安倍政権の裏の顔『攻防 集団的自衛権』ドキュメント」(講談社)、「この国を揺るがす男 安倍晋三とは何者か」(筑摩書房)。メールアドレスはsonoda-k1@asahi.com

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