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新型コロナで「緊急事態宣言全国一律延長」のとんでもないコスト

倒産・失業、GDP激減、自殺・健康悪化、教育機会喪失、地方崩壊…。甚大なコストが

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

年率20%のマイナス成長?

 次のコストはGDPの減少・不況です。

 緊急事態宣言の影響でどの程度GDPが減少するかについては、最も悲観的な大手外資系金融機関のもので年率25%のマイナス成長(参考)、比較的楽観的な国内金融機関の5%のマイナス成長(参考)まで非常に幅がありますが、民間エコノミスト16人の平均では、年率20%のマイナス成長が予想されています(参考)。

 それぞれの予想は、非常に乖離して見えますが、4半期で概ね-4~6%という点では一致しており、違いはその後何時、どの程度経済が回復するにあります。少なくとも「4半期で5%程度、(いつ回復するかはさておき)年率で20%程度のマイナス成長となる」は、多くのエコノミストのほぼ一致した見方であると同時に、我々の感覚にも合致するところだと思います。

 なお失業率yと経済成長率xには「オークンの法則」と言う逆相関の関係が認められています。日本ではおおむね「y=-0.11x」程度との報告がなされており(参考)、これに従えば、x=-20%とすると失業率は現在の2.5%から2.2%上昇して4.7となることになります。非常にざっとではありますが、この結果は前述の失業率3.9%という予想とおおむね合致します。

 もちろん、政府としても手をこまねいているわけではなく、このGDPの低下を防ぐべく、4月30日に成立した補正予算による経済対策が行われるのですが、マクロ経済学の基本式「Y(国民所得)=C(消費)+I(投資)+G(政府支出)」に従って、C+Iの低下(民間企業の作る付加価値の低下)を補うG(政府支出)に該当するいわゆる「真水」は16.7兆円、日本のGDP 557.7兆円の3%にすぎません(参考)。

 そのうえ、この中には「GoToキャンペーン」等、直近の経済状況の改善には寄与しない予算が相当程度含まれており、緊急事態宣言の影響が長引いた場合の、年率20%ものマイナス成長に対しては焼け石に水と思われます(なお、上記経済予想は、この補正予算を織り込んでのものと考えられます)。

 つまり様々なデータから、5月末までの「全国緊急事態宣言一律延長」は、少なくとも四半期で5%、その影響が長引けば年率20%程度のGDPの喪失の引き金を引きかねないものなのです。リーマンショック時のGDPの低下は2年で5.6%程度(参考)ですので、これは、「全国緊急事態宣言一律延長」が予定されている5月末で終了し、その後、景気が急激に回復したとしても、少なくともその間だけでリーマンショック2年分のGDPの減少とそれに伴う不況をもたらし、仮に「全国緊急事態宣言一律延長」が5月末以降も延長されてその影響が続けば、リーマンショックの4~5倍規模の大不況となる事を意味します。

拡大MIA Studio/shutterstock.com

国債による完全保証は「諸刃の剣」

 私は、通常であれば無制限な財政赤字の拡大に反対する立場ですが(論座「山本太郎代表も掲げる『反緊縮』の正体とリスク」)、上記のような大不況となる事態を防ぐためには、少なくとも一時的に、四半期でGDPの5%程度、半年で10%程度(60兆円)の財政支出をすることは不可避であると思います(アメリカはGDPの10%の財政支出を行っています(参考)。

 これに対して、比較的幅の広い層から、GDPの1割と言わず、2割、3割の財政支出をして、国が緊急事態宣言による個人や会社の様々な損失を全額補償して「全国緊急事態宣言全国一律延長」によるGDPの減少を完全に打ち消す「国債による完全補償」(そしてそれによって長期間かけて新型コロナウィルスを完全に日本から根絶する)を求める声が上がっています。もちろん、それができるならばそれに越したことはありませんが、特に国を中心にこれを困難とする見解も根強く出されていますので、実際に「国債による完全補償」は可能かどうか考えてみましょう。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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