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岡本行夫さんが遺した言葉

日本の安全保障を巡る議論は、日本の成長を妨げてきた事なかれ主義の象徴だ

牧野愛博 朝日新聞記者(朝鮮半島・日米関係担当)

「米国ばかりみていると、足元がおろそかになる」

 米国と韓国での4年半の勤務を終えて昨春に帰国した私は、昨年6月12日、岡本さんと久しぶりに面会した。帰国報告のつもりだったが、いつものように、独自の視点と豊富な経験に裏打ちされた岡本さんの話に圧倒された。話題は安全保障が中心だった。

 最初の話題は、近年、「米政府の言いなりで、米国兵器を爆買いしている」という批判があるFMS(米国による対外有償軍事援助)だった。

 FMSは近年、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」などの調達で増加傾向にある。2019年度予算ではFMSは7千億円余りになり、防衛費全体の1割以上を占めた。

拡大岡本行夫さん=2016年3月30日、東京都港区
 岡本さんは「米国のことばかりみていると、足元がおろそかになる」と嘆いた。「米国にばかり武器を発注するから、国内産業に受注が回らない。このままでは先細りだ」と語った。最近も、防衛産業から撤退した企業が出たため、航空機の操縦席を覆うキャノピーや車輪などの製造が国産でできなくなりそうだとも語った。

 岡本さんが言いたかったのは、「米国にばかり追従するな」という論理だけではなかった。「武器輸出三原則の緩和は、死の商人を作る」という主張とどうやって折り合いをつけるかということだった。米国に頼らない防衛産業の育成を目指すなら、自衛隊だけではなく広く海外にマーケットを広げてやる必要が出てくるからだ。

 岡本さんの話を聞きながら、私はかつて自衛隊の知人の言葉を思い出した。

 知人は名古屋で戦車を製造している企業を視察した当時の思い出を語ってくれた。大きな工場内に、ポツンポツンと陸上自衛隊に納入する戦車が置かれていた。陸自だけを相手に商売をしているから、大量生産の必要がないわけだ。視察に同行した企業の担当者は「カネさえ出してくれたら、どこにも負けない良い戦車をつくってやるのに」と残念そうに語ったという。

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筆者

牧野愛博

牧野愛博(まきの・よしひろ) 朝日新聞記者(朝鮮半島・日米関係担当)

1965年生まれ。早稲田大学法学部卒。大阪商船三井船舶(現・商船三井)勤務を経て1991年、朝日新聞入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経験。著書に「絶望の韓国」(文春新書)、「金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日」(講談社+α新書)、「ルポ金正恩とトランプ」(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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