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喫煙者は新型コロナに強い?

「専門家」を疑え COVID-19情報をめぐる難しい真偽判断

塩原俊彦 高知大学准教授

 筆者は地政学上、ディスインフォメーション(意図的で不正確な情報)を使って影響力の拡大をはかろうとしてきた国々による情報操作に何度か警鐘を鳴らしてきた。たとえば、「情報操作 ディスインフォメーションの脅威」がそれである。

 これとは別に、故意かどうかの判断が難しいが、虚偽や真偽不明の内容を含む情報である「ミスインフォメーション」というのもある。今回の新型コロナウイルスについては、ディスインフォメーションもあれば、ミスインフォメーションの拡大といった現象も起きている。

 ここでは、「喫煙者は新型ウイルスに強い」という情報について取り上げてみたい。筆者は1日10本ほど、「メヴュース10」というタバコを喫っているので、なおさら身近な問題として感じられるからだ。

拡大Shutterstock.com

フランスの病院での調査

 フランス・パリのピティエ・サルペトリエール病院で行われた調査結果をもとめた論文「COVID-19症状を示す患者に占める日常的喫煙者の低い発生率」が2020年4月21日に公表された。2月28日から3月30日までのCOVID-19外来患者と、3月23日から4月9日までの同入院患者について調査した。入院患者は343人(男206人、女137人)で、年齢の中央値は65歳。外来患者は139人(各62人、77人)で、中央値は44歳。毎日の喫煙者の割合は5.3%(各5.1%、5.5%)だった。

 フランス人の喫煙者比率は25.4%(28.2%、22.9%)だから、COVID-19患者に占める喫煙者の割合がフランス全体の喫煙率に比べて極端に低いことがわかった。このため、論文は、「毎日喫煙する者が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の発症ないし重篤化の可能性において一般の住民に比べてずっと低いことを示唆している」と結論づけている。

 この報告は、これまで信じられてきた喫煙者はCOVID-19で重篤化しやすいという説と真っ向から対立するものであったから、世界中から注目されることとなった。

対立するWHOの見解

 世界保健機関(WHO)のサイトにある質問に回答する画面では、「喫煙者やタバコの利用者はCOVID-19感染リスクがより高いのか」との質問に対して、「喫煙者はCOVID-19によりかかりやすい」と明言している。喫煙行為が意味しているのは、指が唇と触れ、手から口へとウイルスが移動する可能性が増すから」という。

 欧州連合(EU)の専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)も、3月25日に公表した報告書のなかで、COVID-19の重篤化要因の一つに喫煙をあげている。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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