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「ウイルスがすぐそこにいる」というコロナ時代の新たな日常

花田吉隆 元防衛大学校教授

コロナで加速するオンライン化

 「経済」は、オンライン化が猛烈な勢いで進んでいく。デジタル化は既に世界の新たな潮流だったが、その流れがコロナで加速していくだろう。

 大学は既に9割がオンライン授業に変わった。学生と対面することなく、画面を通しての授業だけでちゃんとした教育ができるのか心もとない限りだが、この流れは今後も変わるまい。

 遠隔診療も初診に際し認められ、医者と患者が直接相対することなく治療が始められることになった。離島の無医村にとっては大きな朗報だ。もっとも報道によれば、医師会は、今回の措置はあくまで一時的な緊急避難に過ぎないというが、それで済むかどうか。

 流通は、既に通販が従来様式の流通業を脅かしていたが、今や、客は店に足を運ぼうとせず、変わって、デリバリーが店と客をつなぐ。ウーバーイーツや出前館が大忙しだ。

 客が来ないなら、こちらから品物を「持っていく」というのがキーワードだ。客が観光地にやってこないなら温泉水を客のところまで「持っていこう」との商売が現れた。ローソンは、道の駅に客が来ず野菜が売れ残るので、それではと、野菜を町のローソンまで運び販売する取り組みを始めた。運搬は地元のバス会社を使う。つまり、客が来ないなら品物をローソンの客まで「持っていく」。

 これは案外大きなビジネスチャンスだ。中国でも、戻らぬ客足を前に、レストランでなければ出せない味を客に届ける商売が始まった。いかに企業が頭をひねるか。苦境はチャンスなのだ。実は今、突如として大きなビジネスチャンスが開けたのだ。そう思うしかない。

「オンライン」が「移動」を代替する

 近代は、人の「移動」とともに始まった。馬が鉄道に置き換えられ、更に、車や飛行機が登場する。人の移動範囲が一挙に広がり、生産規模が爆発的に拡大していく。

 その「移動」が断たれた。こんなことは現代史上初めてでないか。現代史が逆回転し始め、人の「生活圏」が一気に縮まる勢いだ。「オンライン」が「移動」を代替する。

 それが何を意味するか。

 少なくとも産業構造は変化する。IT、通販等、オンライン特需の産業が伸びる半面、オンライン化が難しい業種は生き残りをかけた必死の模索しかない。飲食、観光、レジャー、鉄道、航空等、一部産業は果たして業種として成り立つのか。

 経営形態も変わる。今や、「混雑」がタブーだ。今まで、客は集められるだけ集めればよかった。劇場も球場も、遊園地もレストランも、混雑は繁盛の代名詞だった。店を小ぶりにし、客を店の前に並ばせる。これが集客のコツだった。しかし、もうそういうやり方は通らない。

 混雑は忌避され、人と人との距離をあけることが必須だ。スーパーは、廊下を広げる、レジの前を広げる。レストランや喫茶店は客同士の間隔を空ける。店のレイアウトを見直さないと客を呼べない。

 勤務形態も大きく変化する。在宅勤務で働き方改革が一気に進む。生活圏の縮小は、都市の一極集中を和らげ、地方分散を促すことになるかもしれない。人々は、自らの生活拠点の重要性を見直すことになるかもしれない。

 こういう変化は、とりあえずワクチン完成までのこの1、2年だ。しかしその後も、この変化が大きなうねりとなり、そのまま経済を変えていくことが十分考えられる。

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筆者

花田吉隆

花田吉隆(はなだ・よしたか) 元防衛大学校教授

在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授等を経て、早稲田大学非常勤講師。著書に「東ティモールの成功と国造りの課題」等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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