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「院内感染」は「外出自粛」では防げない~緊急対談「中島岳志×保坂展人」(後編)

最大のクラスターは病院や介護施設。今すぐ職員・患者全員に検査を実施すべきだ

中島岳志 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

「説明なき方針転換」の大罪

中島 自宅療養からの切り替えがうまく進まないというのは、なぜなのでしょうか。

保坂 東京都の場合は、都が受け入れ体制を整えるのに時間がかかったということがあると思います。

 療養先となるホテルの部屋を確保するだけではなく、十分な医療スタッフを配置する必要がありますし、同意をとったうえで自宅まで迎えに行き、病院から移る場合には退院の手続きといったさまざまな実務が発生します。それについて、実際の現場との歯車が噛み合っていなかったということだと思います。

中島 しかし本来なら、そうした問題は2月から3月にかけて、まだ感染拡大が深刻でなかった時期に準備しておくべきだったはずです。そうならなかった、つまりは都政が3月の段階で非常に対応に遅れを取った理由については、しっかりと検証しておく必要があると思います。

 まだ東京オリンピックの延期が決定していなかったことも影響しているのではと言われていますが、現場ではどう感じられましたか。

保坂 少なくとも、オリンピックの延期決定直後から都の対応が急に進み始めたのは事実です。ただ、その際に発信されたメッセージも、PCR検査を拡大するよりは、都民に行動制限を呼びかけるという方向でした。

 国の対応もそうですね。最近になって専門家会議などが「十分な検査ができていない」と口にするようにはなってきましたが、「検査の幅を広げたら陽性者数が増えて医療崩壊を招くから、検査数は絞ってクラスターを追う」という当初の方針が、明確に否定されたわけではありません。

中島 最初にも少し触れましたが、自宅療養から施設療養への切り替えの話も含め、方針を大きく転換する際には、責任ある人たちが、以前の方針は間違っていたから、あるいは状況が変わったから「こういう理由で、ここから方針を転換した」と明確に表明することが重要です。

 しかし、政府は感染拡大の初期段階からいくつかの対応ミスをしてきたにもかかわらず、そのことをはっきりと認めようとしてきませんでした。いわゆる「4日間ルール」を撤回したときのように、「そういう意味ではなかった」などと言って後出しじゃんけんをしようとしさえする。これは非常に大きな問題だと思います。

拡大中島岳志・東工大教授

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筆者

中島岳志

中島岳志(なかじま・たけし) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授

1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学でヒンディー語を専攻。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科でインド政治を研究し、2002年に『ヒンドゥー・ナショナリズム』(中公新書ラクレ)を出版。また、近代における日本とアジアの関わりを研究し、2005年『中村屋のボース』(白水社)を出版。大仏次郎論壇賞、アジア太平洋賞大賞を受賞する。学術博士(地域研究)。著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社)、『パール判事』(白水社)、『秋葉原事件』(朝日新聞出版)、『「リベラル保守」宣言』(新潮社)、『血盟団事件』(文藝春秋)、『岩波茂雄』(岩波書店)、『アジア主義』(潮出版)、『下中彌三郎』(平凡社)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『保守と立憲』(スタンドブックス)、『超国家主義』(筑摩書房)などがある。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現在、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。

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