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コロナ危機をさらに深刻にした中途半端であいまいな政策推進構造

神津里季生・山口二郎の往復書簡(1) 新型コロナが投影する政治の無残

神津里季生 連合会長

 法政大学の山口二郎教授との間でここ数年、「『一強政治』の弊害に歯止めをかけるためには、旧民主党勢力が一体となって力を持たなければならない」という思いを共有しつつ、幾度となくやりとりをしてきました。善後策も模索してきました。しかし、思うにまかせない状況が続くうちに、新型コロナウイルスの感染拡大という想定外の事態を迎えてしまいました。

 日本全国に緊急事態宣言が出されるという危機的状況において、政治の機能不全が露呈しています。いま政治は何をしようとしているのか? いったいどこへ行こうとしているのか? 今回のコロナ禍は、社会におけるあらゆる事柄がこれまでの延長線上では対処不能なことを白日の下にさらしました。

 ただ、ここであきらめるわけにはいきません。コロナとの、おそらく長期になるであろう“戦い”の先に、閉塞状態のトンネルからの出口を見つけることを渇望し、山口教授と(できれば2週間おきくらいに)「論座」で書簡の往復をしながら、考えていくことにしました。

衆院予算委で相対する野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表(左端)と安倍晋三首相(前列右端)=2020年4月28日午前10時54分

山口二郎先生

 その後ご無沙汰いたしております。いかがお過ごしでしょうか。

 世の中全体が長期の忍耐を強いられています。新型コロナウィルスとの闘いのなかで、感染拡大を防ぐための様々な忍耐は仕方がないことではあります。しかし山口先生との間でここ数年共有させていただいてきた「忍耐」、既にあった「忍耐」、すなわち現下の政治状況に対する忍耐は、この間の一連の事象を目前にして極限に達したというのが、現在の私の実感です。

 思うところを以下に述べさせてください。

コロナ克服のための忍耐をいつまで続けるのか

 今回の危機的事態は、様々な側面で日本の悪い面や弱いところを、実にクリヤーにあぶり出していると思います。そして悪い面、弱いところの最大のポイントは、「中途半端であいまいな政策推進構造」だと、今回、あらためて、つくづく感じるのです。

 それにしても、私たち日本人は、コロナ克服のための忍耐をいつまで続けなければならないのでしょうか?

 PCR検査の数の圧倒的な少なさは諸外国とくらべても異常です。この問題は忍耐を強いる状況をさらに長引かせてしまう恐れ大です。

 いったい政権は何を決め手にして、この緊急事態宣言の出口を規定しようとしているのか、国民からしてみると、そこがさっぱり見えないのです。当初から、諸数値・統計を含めた客観的事実についての国民との共有が希薄なままに来てしまった。

「よらしむべし知らしむべからず」の自粛要請

 その一方で、要請だけが繰り返されてきた。いわば、「よらしむべし知らしむべからず」で、自粛要請だけが繰り返されてきたことが、このような疑念を増大させているのです。

 我が国は、基本的に民度の高い国民によって構成されている力のある大衆社会です。

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