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テクノロジーの重要性に気づいてこなかった「マヌケ」な安倍政権

「アポカリプス」後の世界を読み解く

塩原俊彦 高知大学准教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が「アポカリプス」(apocalypse)を招くと書くと大げさすぎると思われるかもしれない。アポカリプスとは、新約聖書にある「ヨハネの黙示録」に由来する。その内容は、世界および人類が最後には破滅を迎える運命にあると説く宗教上の思想である終末論的であったから、「人類滅亡」や「最後の審判」といった意味をもつ。

 このアポカリプスのイメージは、人類がいま直面しているCOVID-19によるパンデミックに重なる。「マタイによる福音書」のなかで、イエス・キリストは「終わりの時」の出来事を子どもの出産にたとえた。母親は出産までに陣痛を何度も体験する。その間隔は次第に短くなり、痛みはひどくなる。この陣痛こそ、人類が直面した疫病や感染症による危機にあたるとイメージすることができる。

感染症が変えた権力構造

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 1347年から1350年までの4年間で、ヨーロッパ全体の黒死病(ペスト)による死亡者は全人口の約3分の1にのぼったとみられている(ウィリアム・H・マクニール著『疫病と世界史』)。絶望的な状況に追い込まれた人々が土着の神々を呼び起こし、悪魔や魔女への「迫害」が本格化する。まったく健康そうにみえる人が24時間もたたないうちに悲惨な死を迎えることが少なくない状況下で、人々は神秘主義に陥っていった。

 そして、「魔女迫害はやがて一つの産業になった」と言われるほど、裁判官、獄吏、拷問吏、執行吏、指物師、書記といった専門的職業を生み出すことにつながるのだ(カート・セリグマン著『魔法:その歴史と正体』)。それは、教会権力を弱体化させ、感染者の隔離といった手段を通じて世俗権力たる国家治安当局の力を強める結果をもたらした。

 そればかりではない。神秘主義への傾斜はユダヤ人迫害へとつながり、西ヨーロッパに住んでいた多くのユダヤ人が迫害を逃れてポーランドなどの東ヨーロッパに避難した。それがナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺へとつながってゆく。あるいは、ラテン語のCarpe diem(カルぺ・ディエム、「その日の花を摘め」)という言葉を広め、ルネサンスを準備したのだ。

 マクニールによれば、メキシコ中心に15世紀から16世紀に栄えたアステカ帝国がスペインによって滅ぼされた背景には、天然痘の流行があった。スペイン人によってもたらされた天然痘が現地住民の3分の1ないし4分の1が死亡する惨劇を招いたというのだ。にもかかわらず、免疫をもつスペイン人に死者はなく、それがあっけないほど簡単に現地住民のキリスト教への改宗につながったという。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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